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塩見泰隆、原樹理…ヤクルト・三輪広報が“シリーズ男”になると予言する2人の男

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/12
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19年、引退セレモニーの挨拶で塩見の活躍を“予言”

 そして、現役時代一緒にやってきて、優勝を知らなかった後輩が、歓喜を味わっていること。とくに、19年の僕の引退セレモニーの挨拶で「近い将来、ここにいる後輩たちが必ず優勝してくれると思います」と言ったあと「ね、塩見くん!」とあえて名指しした、塩見泰隆が優勝の立役者のひとりになったこと。そしてCSの第1戦でも勝利を呼び込む活躍をしていること。

 また、15年の首位打者で優勝の大きなピース、川端が立場を変えてまでも、再び立役者となっていること……。15年の優勝の当事者だったときとはまた違う感慨にふけりつつ、選手にカメラを向け続けました。

最も感動したのは青木さんの「やったよ~」

 そのなかで最も感動したのは青木さん。アメリカ時代はシャンパンファイトをしてきたけど、日本では優勝経験はなく、18年のスワローズ復帰の際は「この球団を愛している。チームを優勝させることしか考えていない」とまで言ってくれた人。人一倍「優勝したい」という気概に溢れ、最下位になってもチームを牽引。今年に入ってからはコロナ禍に見舞われ誰よりも苦しんできた男。そんな青木さんが僕のカメラの前で「やったー、やったー、やったよ~」と顔を真っ赤にして叫んでいる。

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「子供かよ!」とツッコミを入れたかったのですが、万感胸に迫るものがありました。青木さんのあの表情を撮れただけで、僕は報われたと思っています。

CSの「シリーズ男」として期待する男は

 さて、チームは日本一に向けた戦いが始まりました。まずはジャイアンツとのCSファイナルステージ。2015年のときは三木肇コーチ(当時)が「先制点が大事、最初から100%で臨まなければいけない」と言っていたのを覚えています。神宮球場開催ですべて後攻だから1回表の守備をしっかりしようという意識もありました。僕は先発では出ないのでペナントレースも短期決戦のCS・日本シリーズも役割は同じ、しっかり自分のプレーができるようにと準備を怠りませんでした。

 でもCSの直前にフェニックスリーグが行われている宮崎に調整で行かされることがありました。そこで驚いたのは、宿泊先は某高級リゾートホテル。2軍の選手の宿泊先とは違った球団の配慮に、ワクワクするとともに、やる気になったのを覚えています。

 しかし、短期決戦は「シリーズ男」のような流れを持ってくる男が必要です。今回、坂口智隆や内川聖一さんがフェニックスリーグでの調整後、1軍に合流しています。ひと振りにかけるベテラン勢か、僕のことを先輩とも思わない連中か……。

 僕が個人的に「シリーズ男」になるのではと思うのは、前述の塩見。そしてもうひとりは、10月24日の巨人戦で先発、6回途中5安打3失点で勝利投手、打っても2死満塁で3点二塁打を放って気を吐き、マジック2へ貢献した原樹理です。

塩見泰隆と原樹理

「気持ち出てたでしょ!」

 26日のハマスタのベンチの裏で樹理にばったり会ったのですが、僕に「あの試合、気持ち出てたでしょ!」と得意げに言ってきました。思わず「出てたね、イイね~、最高だよ!」と返すといい笑顔をします。

 去年は春季キャンプで彼が苦しんでいるのを見ているし、シーズンに入っても戦力になれず悔しい思いをしているのも見ています。そんな思いを晴らす、神宮でのあの雄叫び。苦しんできたぶんひとまわりもふたまわりも大きくなって帰ってきました。技術的なことは投手ではないのでわからないけど(プロ野球選手として大きくなったな)というのを実感し、率直に嬉しい。なにしろ僕に「バントを教えてください」と頭を下げてきた、向上心に溢れた可愛い後輩ですから、報われないはずがない。

 そんな樹理がCSで神宮球場で先発のマウンドに上がってくれることを期待してやみません。あの気持ちがあれば「絶対大丈夫」。日本一に邁進するチームにさらなる勢いをつけてくれるはずです。

 最後にひとこと。

 俺は、お前のことずっと見ているんだからな、樹理!

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