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今季のスワローズの強さを象徴する青木宣親の“ボテボテのピッチャーゴロ”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/13
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「青木凡退の情報」がチームに共有されていく

 この日青木が得た【今日の球審は左打者の外のストライクゾーンが広い】という情報を2回以降はチーム全体で共有し、それを活かしていきます。

 同じ左バッターの村上宗隆は2打席目以降、外の球には少々ボール気味であっても積極的にバットを出していました。

 奥川投手がこの日唯一のピンチであった5回表2死一、三塁の場面、フルカウントから代打・八百板卓丸を外いっぱいのストレートで見逃し三振に取ったシーンでは、その情報を利用した捕手・中村悠平の見事なリードとそこへ投げ込む奥川の制球力が光りました。

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 ストライクコールを受け、「嘘でしょ……」という顔でベンチへ帰っていく八百板。

 青木の打席で今日の球審の傾向を知っていたはずの小林誠司は、おそらくチーム全体にその情報を共有させていなかったんだと思います。

 第2戦の川端慎吾が菅野智之からもぎ取った押し出し四球。

 そして第3戦のこのシーン。

 二死から川端、塩見の連続四球で満塁。皆がチームの勝利のために繋いだチャンス。

 四球の後の初球はストライクが来やすい。

 分かっていてもなかなか手が出しにくいこの場面で、青木宣親は皆の想いを背負ってそのバットを振り抜きました。

 全てはチームの勝利の為に。

 絶対に忘れてはいけないのは、四球を選び代走でベンチに帰った川端慎吾が一番前で塩見と青木に声援を送っていた事と、青木の逆転タイムリーを打った後の本人の喜ぶ様子とベンチが喜ぶ様子、その温度が全く変わらなかった事。

 この温度差が変わらない様を見て、夜中DAZNを観ながら一人で号泣しておりました。

 フォア・ザ・チームという意識の差、チーム一丸となって勝ちにいっているのか、そうでないのかの差がハッキリと出た瞬間でしたし、今年に関してはその差が巨人を圧倒しました。

 全ては、あの【ボテボテのピッチャーゴロ】から始まっていたような気がします。

 投打が噛み合っているどころか、ベンチ入りメンバー全員が噛み合ってる状態なんて、なかなかないですよ。

 それが、あのMVP発表の時の塩見のズッコケにも表れていました。

 あれ、よく見ると事前に高津監督、村上選手、山田選手、青木選手らが打ち合わせしてましたからね(笑)

 高津監督がさっきもらったばかりの優勝盾を片手に持ち替えてまでズッコケようとするリアクション。

 と同時に、遠慮がちな塩見に「もっと前へ豪快に倒れろ」というアシスト。

 めちゃくちゃ笑いました。

 現に塩見本人より村上選手と青木選手の方がズッコケてましたからね(笑)。

 流石だなと思ったのは、その後すぐに高津監督は先頭に立ってMVPを獲った奥川への賛辞に切り替えていた事。

 この監督が先頭にいるからこそ、こんなチームになったんだと再確認できたシーンでもありました。

史上初、2年連続最下位同士の日本シリーズへ

 第1戦で「伸」繋がりのオリックス・山本由伸が完封し、第2戦でもお互いが連続完封勝利。第3戦はお互いが引き分けての日本シリーズ進出。

 今年の日本シリーズは史上初の2年連続最下位チーム同士での戦いになりました。

 似たようにギリギリまで優勝の行方が分からず、最後の最後で優勝を決めたチーム同士、そして優勝チームでありながらも最下位からのチャレンジャーチーム同士のぶつかり合い。

 しかもお互いがホーム球場を使えないというオマケ付き(笑)。

 もう今からワクワクが止まりません。

 しかし、間違いなく今のチームスワローズは12球団イチ強い。

 間違いありません。

 自信を持ってこんな事を言えるなんて、そうないです。

 それぐらい、今年のスワローズは僕の誇りです。

チームにはファン一人一人の想いが届くんじゃないかと思わせてくれる雰囲気がある

 私事ですが、今月11~17日まで師匠・鶴瓶の全国独演会ツアーの東京公演の真っ最中でして、連日僕も参加させていただいています。

 その中で東京音頭が流れる場面があるんですが、毎日心の中で傘を全力で振っていました。

 ほんまに振ってしまったら、阪神ファンの師匠に間違いなく11年ぶり4回目の破門にされていたでしょう(笑)

 隠れキリシタンの気持ちが少し分かった今日この頃でしたが、それが球場に行けない日に僕にできる全力の応燕でした。

 今の選手達には、僕達ファン一人一人の想いが本当に届くんじゃないかと思わせてくれる素晴らしい雰囲気がある。

 勝負は決しましたが、今日も全力でエアー傘、振ってまいります!

 最後に選手の皆様……

 絶対日本一になって、高津監督が22回胴上げされる姿を僕達ファンに観せてください!!

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