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「とんでもない人だよ、いい意味で」

 2018年、私の文春野球初登板コラムは彼の著書『栗山魂』を強引に深読みするものでありました。自分の内面を読ませない人、注意を怠らずに見ていきましょうと書いてから3年半。何度もコラムの題材にしてきましたが、結局彼のことを判ったとは思えません。とうとうしっぽを掴ませないまま、柔和な笑顔で栗山英樹は退任していきました。

 この10年間、何度となく思い出していたことがあります。就任1年目の2012年シーズン、まだ序盤の頃だったと思いますが、ファイターズが勝ったある日の「プロ野球ニュース」です。

 関根潤三さんがいましたから日曜日で、ということは相方は松村未央アナウンサーですね。彼女が新米監督栗山英樹の印象を語っていたのです。いかにも優しそうな方ですねと。

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 すると関根さんは楽しそうに笑い出して、こんなことを言ったのでした。

 僕は3年一緒にやったから知ってるけど、あの人の腹の中は読めないよ。とんでもない人だよ、いい意味で。

 関根さんがスワローズの監督に就任した1987年、栗山英樹はプロ4年目、まだ1軍定着もしていなかった頃です。そこからの3シーズンで、一体何が関根監督にそんな印象を与えたのでしょう。20年以上も経ってから、あんな思い出し笑いをさせるような。

 まだ何者でもない若造の時分から、栗山英樹は既に曲者だったようでした。

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