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「1995年11月1日に、まさにこの代々木で僕たちは誕生して。そして今日、2015年11月1日に同じ景色が見れるとは思っていませんでした。これは本当に、奇跡に匹敵するくらいの出来事だと思っています。この奇跡を起こしてくれたのは、スタッフの皆さん、僕たちの最高の曲、そして、キレイでカワイイ(ファンの)みんなのおかげです。でも、20年が奇跡と言うなら30周年はなんと呼ぶんでしょうか。40周年はなんと呼べばいいんでしょうか。まだまだ僕たちは走り続けていきますので、ずっと僕たちを応援して支え続けてください。これからもお願いします」(音楽ナタリー「V6『V6 LIVE TOUR 2015 -SINCE 1995~FOREVER-』特集」より)

「デビュー日=解散日」に込められた思い

 正直、20周年を迎えたこの時も、“やり切った感”を私は感じていた。しかし、未来を見据えた姿勢をこのコメントから受け取り、2017年8月からの「The ONES」というコンサートツアーの初日を名古屋で見た時には「まだまだいける」と、そんな気持ちになった。なぜなら、V6は大人のアイドルとして、“ただのアイドル”から脱却していたからだ。

「LIVE TOUR 2017 The ONES」(avex trax)

 V6がデビュー当時から掲げてきた「楽しもう」という方針に加えて、楽曲、ダンス、映像、演出、セット、そして照明を総合して「時間と場所を支配して魅了する」という新たな方向性が、そこではしっかりと示されていたのだ。

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 それから約3年半が経った2021年3月12日16時、ファンクラブ内の動画で告知されたのは、デビュー日である11月1日に彼らが解散するということだった。それを見て最初に感じたのは、解散という事実そのものよりも、「この人たちの引き際の美学はここにあるんだな」ということだった。始まりも終わりも同じ日にすることで、嬉しさも悲しさも全部同じ日に閉じ込めて、レールを降りることにしたのだろう。V6にとって11月1日は出発点であり、終点なのだ。それを、円を描いて終わるのだろう……「Full Circle」という未発売曲にもつながり、腑に落ちた。

次のスタートを切るのに必要な“ピリオド”

 先ほども触れた2017年のツアー「The ONES」の中で、坂本さんはV6を電車にたとえてこう言っている。「考え方も年齢も違う人間がパッと集められて『はい、行ってらっしゃい』とレール引いてもらって、レールには乗ったけど電車の中では大喧嘩。でもそのうち喧嘩をすることでお互いをわかって、このまま(敷かれた)レール乗っててちょっと行ってみようかとなったのが10年、15年目、20周年を迎えてそれが自然の流れになっているのかなというのがあるから、譲り合いもあるけど、認め合いもある。途中下車するやつもいるし、でも待ってるし」

1995年のデビューシングル「MUSIC FOR THE PEOPLE」(avex trax)

 終点に綺麗なピリオドを打つ必要性は、2018年に解散したタッキー&翼の最後を見ていた方ならご理解いただけるだろう。彼らのように“綺麗なピリオド”を打つことは、一人ひとりのメンバーが次のスタートを切るためにも大事なものだ。

 そのためにV6は、アルバムの制作や、可能であれば全国ツアーを行ったうえで電車を降りる予定のようだ。映画、舞台、ミュージカル、テレビ等で日々戦いながら、ホームであるV6を守り、事故を起こさずに安全運転してきてくれた6人、そしてジャニーズ事務所、所属レーベルのavexにはいちファンとして感謝しかない。