厳しい環境を生き延び、絵になる姿、味があるたたずまいを見せてくれるスーパーを探訪し、その姿を記録する――そんな活動を、私はここ5年ほど地味に続けている。古い大型スーパーが閉店ラッシュを迎えているのを知り、こういう古いものも何だか面白そう、というくらいの関心から入っていったのがそもそもの始まり。だが、地理的にも奥が深く、思いもよらない土地に思わず目を引く店を発見する楽しさに惹かれて、スーパーを見るためだけに日本全国を回るようになった。
海を渡ると、“隠れ家系スーパー”があらわれた
これまでで一番といっていいほどの衝撃を受けた店を、再び訪ねる機会があった。場所は新潟県の佐渡。本州からの玄関口・両津港の近くにある「ショッピングプラザキング両津店」という店だ。「キング」は佐渡島内ローカルのスーパーで、ここの他にあと3店舗を展開している(運営元は「株式会社かしわくら」)。目指す両津店は佐渡汽船ターミナルから歩いて10分ほどの、古くからの市街地である夷(えびす)地区の中にある。
そんな離島の一スーパーの何が衝撃的なのかというと、その外観だ。入母屋造り、堂々3階建ての日本家屋そのもの。まわりの街並みに完全に溶け込んでいる。ぱっと見でこれがスーパーだとは思えず、知らなければ誰もが素通りしてしまうだろう。
店でお話をうかがった「かしわくら」本部の方によれば、かつて「富山館(とやまかん)」という旅館だった建物とのこと。スーパーになったのは、40年近く前のことだそうだ。廃業した映画館やボウリング場をスーパーに改装したケースは全国的に多くあったというが、元旅館のスーパーというのはかなり珍しいはずだ。