ですが少人数での運営は、1日にこなせる来客数に限りがあるため、売上は頭打ちです。また美容室は利便性が重要視されるため、駅近や人気の地域など、家賃が高いテナントを選ぶ必要があることもネックです。
そのため、今から小規模な「美容室の開業」をするには、ハードルが高いのが現実です。
退社時のご法度
また、僕自身は円満に退社しましたが、美容師の退社・独立にはトラブルが付き物です。それは「商品」である美容師をお客様が選ぶ「指名制」に起因しています。
ホストなどの水商売にも通ずる部分ですが、業界には昔から「近所での開業はアウト」「お客様は“お店の資産”だから、連れて行くな」といった退社時のご法度があります。
指名されるお客様を引き連れて開業したり、隣近所で美容室を開かれてしまうと、根こそぎ利益を奪われるに等しいのです。
そのため退社する美容師は、指名してくださっていたお客様に“次の勤め先”を伝えることができないケースが多いです。
店舗展開する美容室では、入社時にそれについての契約書が用意されることも珍しくありません。今でも「辞めるなら、“客を連れて行かない”という契約書にサインしろ」と社長から後付けで理不尽な要求をされた、と耳にすることもしばしば。
そのため昔から「お客様とプライベートなお付き合いはしてはいけない」「お客様と連絡先は交換してはいけない」といった規制をかける美容室も多くありました。
SNS時代との価値観の乖離
多くの美容師は、InstagramやLINEなどのSNSをプライベートとは別のアカウントで利用しています。ですが、それは必ずしもアカウントを「使い分けている」わけではありません。辞める美容師がお客様を引き連れて行くことを防ぐために「会社側が規制している」場合もあります。
しかし、SNS時代では、お客様と繋がる方法はいくらでもあります。それを会社から咎められるのも、時代の価値観とは乖離してしまっています。
実際には、美容師は繰り返し「指名される」ことでお店にお客様を招いています。自分の独自性を支持してもらって対価を支払うお客様は、その「美容師さんのファン」である、とも考えられます。こういうふうに見ると、芸能人などのファン経済に近い側面があります。