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日露首脳会談に暗雲か? ロシア閣僚逮捕の衝撃

2016/11/27
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逮捕されたウリュカエフ氏 Photo:Kyodo

 11月15日、日露経済協力のキーパーソンだったウリュカエフ経済発展相が収賄容疑で訴追された。

 ウリュカエフ氏は国営石油大手、ロスネフチによる別の国営石油企業の株式取得に便宜を図った見返りに200万ドル(約2億1000万円)の賄賂を受け取ったとされるが、学者出身でリベラル派の同氏は本来、国営企業民営化を支持しており、不可解な点が多い。政権内の複雑な権力闘争に巻き込まれた模様だ。

 問題は、日露首脳会談を12月15日に控えたこの時期に、プーチン大統領が逮捕、更迭を承認した点だ。ウリュカエフ氏は世耕弘成経済産業相のカウンターパートで、大統領訪日時に調印される20近い日露協力案件のロシア側責任者だった。

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「更迭は訪日後でもよかった。プーチン大統領が訪日への意欲を失っている証拠」(日露関係筋)という声もある。RIAノーボスチ通信によれば、ロシア捜査当局は日露経済協力を支持するドボルコビッチ副首相らリベラル派高官7人を今後訴追する可能性があるという。

 経済危機でエリート層の利権が先細りする中、保守派が民営化を訴えるリベラル派を標的にし、大統領もそれを容認する構図だ。

 同氏の逮捕には、トランプ米大統領候補の当選も影響しているとの見方がある。ロシアのパニア下院議員は「トランプ次期大統領は就任後、保護貿易主義を強め、グローバル化が後退することから、ロシアもトランプ路線に沿って改革・開放を放棄する」と予測している。事実なら、日本との経済協力の重要性も低下する。

 プーチン大統領を「偉大なリーダー」と称えるトランプ氏の当選で、ロシアは対米関係打開を最優先に掲げる可能性があり、相対的に日本への関心が低下しかねない。

10月末に来日した大統領側近のマトビエンコ上院議長は「ロシアはクリル(千島)の主権を手放さない。二島を引き渡す交渉も行われていない」などと強硬発言を繰り返した。

利権闘争が保守派優勢となれば、ロシアは北方領土交渉でますます高飛車な対応を取ろう。大統領訪日を前に、逆風が強まる一方だ。

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