自力でテキストの解説を読み解いて練習問題に挑まなければいけないのだから、相当な読解力と自律性が求められる。この学習スタイルに適応できるかどうかという時点で、いわゆる“地頭がいい”といわれる子どもをフィルタリングする効果が働いていたと考えられる。
さらに、自力で理解しようとしてうんうんうなっている時間が長いぶん演習問題の数をこなす時間は減るが、そのうんうんうなっている時間こそ、子どもが自らの思考を自由にフル回転させている時間であって、実は子どもの思考はそういうときにこそ成長する。その成長が必ずしも点数に直結するわけではないのだが。
いわゆる“地頭のいい子”をフィルタリングしたうえで、その子たちの思考を自由にフル回転させる。それが予習中心の学習スタイルの構造だといえる。
復習主義全盛時代へ
しかしサピックスは中学受験勉強のスタイルを変えた。毎回の授業の場でプリント形式の教材を配布し、その場で問題を解かせる。講師がいろいろな生徒の解法を拾いながら、討論形式で授業を進める。
そして大量の課題が渡される。授業でやったことを思い出しながら、反復練習をくり返す。やりきれない分量の課題を渡されて、やればやったぶんだけ知識が定着するしくみだ。これがめきめきと成果を上げた。いわゆる復習主義の中学受験勉強だ。
四谷大塚の職員も「復習主義のほうが学習効率がいいことは四谷大塚でも認識されています」と認める。それでも「四谷大塚では予習にこだわります。誰かに言われて動くのではなく、自分で解決法を模索できる未来のリーダーを育てたいからです」と言う。教育思想の違いである。
実際は、いまや復習主義の中学受験勉強が主流である。四谷大塚の「予習シリーズ」を使用している塾でも、たとえば早稲田アカデミーのように、実質的に復習主義の学習サイクルになっている場合が多い。