一番驚いたのは、保護室のドアの前に、バリケードのようにマットレスを置いていたこと。ほぼ立てこもり状態です。この夜は特に症状が顕著で、廊下に向かって「助けてください。警察を呼んでください」と繰り返し叫んでいました。
さらに、後頭部を壁に打ち付ける自傷行為を始め、食事も一切拒否するように。まともに話が出来る状況では、とてもありませんでした。
統合失調症の急性期の症状
久保木被告の症状は、どの精神科医が見ても、明らかに統合失調症と診断できるものです。例えば、雑誌を便器に詰め込む行為は、よく見られる問題行動です。統合失調症の患者さんは、自分の服やトイレットペーパーを、便器に詰まらせることが多いのです。
実は久保木被告は鑑定が始まる前から統合失調症に対する抗精神病薬を処方されていました。しかし、服薬していると鑑定に影響が出る可能性があり、試験的に処方を中止しました。すると予想通り、激しい症状が出ました。2週間ほど経ったところで、やむを得ず処方を再開すると、だんだんと症状は落ち着いていきました。
こうした事情もあり、当初は鑑定期間を2カ月と決めていましたが、裁判所に相談して3カ月へと延長。経過をみながら話を聞きました。
統合失調症は主に思春期から青年期に発症し、発症率は人口の約1%。原因は解明されていません。経過は主に4つの段階に分けられ、段階ごとに症状も異なります。
●前駆期:不安、焦燥感、抑うつ気分、神経衰弱状態
●急性期:幻覚、妄想、自我障害などの陽性症状、精神運動興奮、昏迷
●回復期:陽性症状が次第に軽快
●慢性期(残遺期):能動性の低下、感情鈍麻などの陰性症状、人格水準の低下
久保木被告が鑑定中に示したのは、まさに「急性期」の症状でした。
(後編に続く)