延長12回の接戦を制し、ヤクルトが20年ぶり、6度目の日本一に輝いた。11月27日、ほっともっとフィールド神戸で行われた日本シリーズ第6戦、5時間の試合を制し、1対2でオリックスに競り勝った。優勝インタビューで、2年連続の最下位からの優勝について、「感謝、感謝、感謝」と語った高津臣吾監督。高津ヤクルトの“凄み”を報じた週刊文春の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2021年12月2日号、年齢、肩書等は掲載時のまま)。

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 開幕前、高津臣吾監督率いる東京ヤクルトスワローズは、ノーマークの存在だった。なんせ前年まで2季連続の最下位。ところが9月に入って首位に浮上すると、そのまま一気に優勝まで突き進んだのである。

8度目の優勝が決まり、8回胴上げで宙を舞った高津臣吾監督 ©時事通信社

 ここ10年は五度も最下位に沈みながら、2015年に次いで優勝は2回目。ちなみに今季序盤、首位を独走していた阪神は、10年で7回Aクラス入りするも、優勝ゼロ。リーグ制覇から16年間遠ざかっている。

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 ヤクルトはなぜ定期的に優勝できるのか。スワローズ担当記者はまず、独特のチームカラーを解説する。

「東京の球団ですが、巨人ほど注目度が高いわけではなく、負けが込んでもファンからきついヤジが飛ぶこともほぼありません。面倒な派閥や上下関係もないので、首脳陣を含めてチーム仲がよく、伝統的に明るく前向きな選手が多い」

 この“ユルさ”と“ヌルさ”が、よくも悪くもヤクルトの特徴。そして戦力が噛み合った時は思いがけない強さを発揮するのだ。

 現役時代に三度の優勝を経験しているOBの宮本慎也氏もこう客観視する。

「ダメな時はダメなんですが、状態がいい時は、勢いに乗ってガーッと勝つ。昔からそういうところがあるチームでした」

 宮本氏が入団した1990年代、ヤクルトはID野球を掲げる故・野村克也監督のもと、四度のリーグ制覇と三度の日本一を達成。ただ、92、93年の連覇以降は、4位と優勝を交互に繰り返している。