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 それだけに、Wiiのコンセプトを具現化した「Wii Sports」の存在は大きく、Wiiの魅力は発売後すぐ伝わっていきました。

 ゲーム機の操作端末と言えば、おなじみの「コントローラー」ですが、ゲームに慣れない人には扱いが難しいという声があるのも確かです。PlayStation 5の発売直後も決定キーが「○」から「×」に変更され反響を呼びましたが、実際のところ「慣れた」人でもキーの操作感が変わればしばしば戸惑います。ゲームに慣れない人にとってはなおさらで、意外に「コントローラー」はちょっとした壁になっているのです。

 ところがWiiはリモコンを握って振るだけ。直感的で誰もが楽しく遊べました。むしろ、ゲームファンの方が体感型とも言える操作方法に苦労したといえるのかもしれません。

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 白熱するあまり、Wiiリモコンを振り回して手からリモコンが抜け、テレビにぶつけて画面が壊れる……という現象も起きました。あまりに話題になり、Wiiリモコンの使用時にはストラップを手首に巻き付けて遊ぶようにと告知されるほどでした。

コントローラーを大幅に見直したことで、それまでにないユーザーまでリーチした ©iStock.com

「テレビCMでやっている“ファミコン”はこれかね?」

「ゲーム機が売れるかはソフト次第」という業界の格言があります。その言葉通り「Wii Sports」は、「万人がゲームを楽しめる」というWiiの魅力を存分にアピールできるソフトでした。ゲームファン以外も買い求め、Wiiは品薄になりました。

 任天堂が、Wii本体の修理受け付けを2020年3月31日の同社到着分をもって終えると発表した際、当時の人気ぶりについてとある編集者が「当時聞いていたラジオ番組でも、しばしばWii SportsやWii Fitが登場していた」と語っていました。ゲームをラジオで取り上げるという難しい企画のはずなのに、聞いている方も意外と楽しめていた記憶があるようで、画面が見えなくても「情景が浮かぶようなゲーム」だったのだと思います。

 実際、私自身が当時のゲーム販売店を取材した際にも、こんな話を聞いたことがあります。孫に頼まれたであろう年輩の男性が来店し、Wiiリモコンを手に取って、「テレビCMでやっている“ファミコン”はこれかね?」と言ってレジに来たそうです。

 もちろん“ファミコン”とはWiiのこと。店員が、Wiiのゲーム機本体が人気で売り切れで、リモコンだけではなくゲーム機本体と別にソフトを買う必要があると説明しました。ところが男性は、テレビCMにあるWiiリモコンが手元にあるのに買えないのはおかしいと食い下がったそうです。