11月29日、東京地検特捜部は日本大学の田中英寿理事長(74)を、約5300万円を脱税した所得税法違反の疑いで逮捕した。
日大問題を長年追い続け、11月4日発売の「週刊文春」で、田中氏の自宅から約1億円が見つかったことや、特捜部が脱税での立件を模索していることをいち早く報じたジャーナリストの西﨑伸彦氏。同氏の取材によれば、事件の背景には田中氏と暴力団との蜜月があった。
2014年2月に「週刊文春」は、住吉会の福田晴瞭会長(当時)と日大元幹部、そして田中氏が3人で並ぶ写真を掲載した。その翌年には、山口組六代目の司忍組長と田中氏が名古屋のクラブで親密そうに寄り添う写真を外国メディアが報道。さらに田中氏と、司氏の出身母体である弘道会幹部で、同会傘下の佐々木一家総長でもあった山本岩雄氏(故人)とのツーショットも出回った。こうした暴力団との関係を背景に、田中氏は日大、および子会社の日大事業部を恐怖で支配し、独裁体制を敷いていたという。
「大相撲には田中氏が育てた日大出身の親方が複数いますが、例えばある親方が部屋を開いた際は、小雨の降る地鎮祭に、後に山口組若頭となる髙山清司氏が姿を見せたと言われていた」(日大関係者)
2005年、司氏は山口組六代目に就任したが、その一方で、1997年の組員による拳銃不法所持の共謀の容疑について長い裁判を戦っていた。2005年12月に最高裁で有罪が確定するが、その過程で司氏を擁護する“意見書”が提出された。
「憲法学者である慶応大学の小林節教授(当時)が作成したものでしたが、その段取りをしたのが田中氏でした。田中氏は以前に面識のあった小林教授を銀座のしゃぶしゃぶ店に連れ出した。そこに髙山氏が待っていて、意見書の作成を依頼したのです」(田中氏の知人)
当時、田中氏は日大常務理事だったが、その行動は教育者の矩を軽々と越え、さらにエスカレートしたという。