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 集められていく情報から、国際捜査課では地域別にある特徴が見えていたようだ。

「福建省はもともと貧しい地域であり、出稼ぎ目的で早くから日本に来る者が多く、以前は密入国の大半を占めていた。それらを斡旋する蛇頭などの組織的な犯罪グループも存在し、当時、日本での犯罪率では福建人が圧倒的に高かった。人懐っこく素朴な感じのする人たちだが、福建省出身という地域的な意識は強く、結束は固いほうだ。だが問題が生じると、仲間を守るより自分の身を守るという意識が強かった」(警察関係者B)

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中国では金がある者を勝者と考える傾向が強い

「吉林省や黒竜江省などの東北地方は朝鮮族が多く、彼らは非常に結束が固くて団結心が強い。事件の目撃者になっても、自分たちの仲間であれば口をしっかり閉じてしまう。朝鮮族から情報を得るには、日頃の付き合いを大事にして、かなりの信頼関係を築かなければ無理だった」(同前)

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 見知らぬ刑事が尋ねたところで、彼らが口を開くことはなかったという。

 例えば不法滞在かもしれないという者から情報を聞き出そうとするなら、その場でビザの確認はせず、身の安全を脅かさないことで、協力者になる確率は高かったと警察関係者Bは明かしてくれた。

「ただ総じて中国では、金がある者を勝者と考える傾向が強い。みすぼらしい恰好をする人間を信用しない。知的・文化的なものの価値より、お金があるかないかでその人間を判断する。金があって身なりがよく、洗練されているかどうかより、成金趣味でも自分が金を持っていると誇示がちなのも特徴だ」

アキレス腱を切って、被害者を動けなくしてから殺す

 警察関係者Bによると、この金銭至上主義が犯罪者グループをより複雑にしていたという。

「出身ごとの結束やまとまりはあるのだが、彼らは金を儲けることが最優先だった。儲かるとなると、仮に違う出身グループであっても手を組み、儲からないとなるとさっと他に移っていった」

 犯罪傾向としては、暴力的な犯行や怨恨などによる衝動的な犯行が多く、暴力団に正面からぶつかるのも中国マフィアだったようだ。当時、新宿で中国人が中国人を殺害したある事件では、アキレス腱を切って、被害者を動けなくしてから殺すという残忍な方法をとっていたものもある。