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歌舞伎町でクラブ店長を刺殺した中国マフィア 警察はいかにして犯人を追いつめたのか

捜査関係者が明かす、「クラブヴィーナス事件」の顛末

2021/12/12

genre : ニュース, 社会

 2001年8月16日午前2時過ぎ、歌舞伎町のクラブ「ヴィーナス」に男5人が押し入り、店長の腹を刃物で刺して死亡させ、客やホステス計12名を拘束し、現金や貴金属を奪って逃走するという事件が起きた。現場を脱出した客の通報により、発生から約1時間後に事件は発覚する。

「犯人は中国人だと思う」

 縛り上げられていた客らはそう証言したという。この証言から、事件現場の所轄である新宿署では、事件直後にビルのエレベーター付近にいた福建人ら数人のグループを犯人ではないかとにらんでいた。早期解決できると思われたが、捜査はその後一向に進まなくなる。

捜査一課が特別捜査本部を作り、事件を捜査することに

 犯人らの動機もわからなかった。当時、新宿界隈では中国人が中国人を狙う強盗事件が多発。集団で店を襲い、殺人も暴力もおかまいなしで、真面目な中国人経営者から金をむしり取った。クラブヴィーナスでは中国人ホステスが働いていたというが、店長は日本人だった。さらに犯人らが金を奪おうとした時、店長が特に抵抗した様子はなく、刃物で刺して死亡させる前に金を奪っていたという。

強盗殺人事件が起きたクラブ「ヴィーナス」が入るビルの周辺を警備する警察官 ©時事通信社

「事件解決に向け、新宿署では捜査一課が特捜(特別捜査本部)を作り、事件を捜査することになった。国際犯罪組織特別捜査隊とは協力体制をとり、国際捜査課は応援部隊という位置付けだ」

 警察関係者Aは当時をそう振り返る。

犯人を特定できる情報に時間がかかった理由

 警視庁に組織犯罪対策部はまだなく、外国人や外国人による組織犯罪を取締まっていたのは国際捜査課。国際犯罪組織特別捜査隊は、警視庁が新宿を拠点に1998年に発足させた地域重点型の組織だ。また特別捜査本部というのは、社会的反響が大きい事件や殺人事件などの重大事件の時に設置され、所轄だけでなく本庁からの応援も含めて一緒に捜査するものである。

「いくら捜査してもこの福建人グループが犯人だという証拠も、それ以上の目撃証言もあがってこなかった。エレベーター周辺から採取した指紋も、事件現場に残された指紋と一致しなかった。結局、一から捜査をやり直すことになった。

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