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「交渉を最優先とせよ!」

  一方、皇族で海軍軍人の伏見宮は、天皇を脅すようにこう語る。

「国民も開戦を望んでおります。この空気のなか、戦争をしなければ、陸軍に反乱が起きるかもしれぬ……」

 

   二・二六事件以来、軍に不都合な首相は排除され、軍部独裁の道が開かれていた。しかし、天皇はなおも主張する。

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「交渉を最優先とせよ! アメリカと戦争は避けたい…!」

 

 しかし、アメリカとの外交交渉が暗礁に乗り上げた近衛文麿首相が退陣。東条英機陸軍大将が首相となり、時局は戦争へ戦争へと傾いていく。

 

 1941年9月、御前会議の場で、天皇は明治天皇の歌を読み上げた。

「四方の海  みなはらからと思ふ世に など波風のたちさわぐらむ」

(四方の海はみな兄弟のように思っているのに、なぜ波風が騒がしく立つのだろう)

平和を望む天皇の思いとは裏腹に、12月1日、ついに対米戦争が最終決定される。

 

  12月8日、ハワイを奇襲。アメリカとイギリスに宣戦布告した。香港、マニラ、シンガポールを次々と攻略し、南太平洋の広大な地域をおさえた。

 だが、破竹の勢いだった日本軍も、1942年6月のミッドウェー海戦で惨敗、戦況は一変する。連合軍の反攻が始まり、やがて日本本土への空襲が始まった──。

 

 1945年3月、焦土と化した東京の街を視察した天皇。「これ以上、国民に塗炭の苦しみを味わわせることはできない」。天皇の胸に「終戦」の二文字が宿る。和平か、徹底抗戦か、「8・15」をめぐる戦いが始まる……。

 続きは、文春オンライン連載「日本のいちばん長い日」でお楽しみください。

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半藤 一利

文藝春秋

2006年7月7日 発売