なお、このクラス役員決めに参加するのは、ほぼ母親です。PTAはジェンダーバランスも最悪で、父親は会長(と次期会長候補)しか見かけない、ということも未だによくあります。
PTAによる母親のストレス
このような状況は当然、母親たちにとって大変ストレスです。稀な例ではありますが、うつ病を患った母親がPTAの強制を苦に自殺をはかった、子どもを殺めてしまった、という話を聞くこともあります。筆者はこれまで3例聞きましたが、うち1例は知人(の妻)です。
役員決めのときだけではありません。活動の現場でも問題は見られます。専業主婦が多かった時代の名残と、「先生の勤務時間内に済ませる」という学校側の要請から、PTA活動は未だに平日日中に行われることが多く、保護者たちはしばしば仕事を休んで学校に集まることになります。そのため「PTA活動で有休を使い果たし、子どもが病気のとき仕事を休めなかった」といった話もよく耳にします。委員長になった人が「必ず来い」といえば、ほかの人たちは従わざるを得ず、病気や怪我をおして活動に参加する人もいますし、乳幼児を家に置いて学校に来る人も見られます。
「必ずやる」という強制ルールをなくす
こんな状況は、さすがにおかしいと考えて、PTA改革に乗り出す保護者たちも出てきました。改める点は、主に2点。1つは自動加入をやめ、加入意思を確認するため、加入届を用意すること。もう一つは「必ず何人の委員を出す」というノルマ制をやめ、希望者だけで活動する「手挙げ方式」を採用すること。要は加入も活動も無理強いせず、本人の意思に任せる形に変えようというのです。
これは、意外と簡単なことではありません。今までの強制ルールに従ってきた保護者のなかには、「ルールを変える」と聞くと「我慢した自分が損をする」と感じ、「そんなのズルい!」と反対する人もいますし、「波風を立てないでくれ」と言って改革を止める校長先生もよくいるからです。そんななかで改革を進めるためには、根気よく説明や話し合いを繰り返さねばならず、どうしてもある程度、手間暇がかかることを免れないのです。