病院は基本的に治療をする場所だから、入院した時点で何かしらの延命処置が施される。自然に死にゆこうとする身体に点滴や胃瘻をすることで命を延ばすことを母は元気な頃から望んでいなかった。「元の若い身体に戻れるならともかく、ここまで生きて何も思い残すことはない。倒れたら放っておいて」が口グセだった。とはいえ、このまま放っておくこともできない。
困り果てた私を救ってくれたのは…
困り果てた私を救ってくれたのが、少し前に介護認定手続きをした「地域包括支援センター」だった。実は母が倒れる1ヶ月前、腰痛を訴えたこともあって、この先何かあったときのためにと介護認定を受けていたのだ。担当の人が親切だったのを思い出し、電話で事情を話すとすぐに地域の「往診専門ドクター」を紹介してくれた。コロナ禍で奮闘する往診専門ドクターの様子をニュース番組で観てはいたが、いざ自分の身内の問題となると、なかなか発想が及ばなかったのでとても助かる。もしご高齢の親御さんをもつ方がいたら、不安を感じた際に早めに介護認定をとっておくといざという時に助けになると思う。
ようやく調整のついた往診ドクターによって、母の状態が「老衰」による最終期との診断を受けた。延命治療をしますかと尋ねる医師に、このまま在宅で看取りたいという意思を伝えると、定期的に往診をするというかたちで担当医がついてくれた。
その後ドクターから地域包括支援センターに、診断報告と看取りに関する家族の意思が伝えられ、それを受けて包括支援センターがケアマネージャーを選定。ケアマネを通じて翌週からヘルパーさんが家に派遣されるように調整が進んで在宅介護の環境が整った。基本的には私によるワンオペ介護だが、定期的に支えてくれるドクターとヘルパーさんが神に見えるほどありがたかった。