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「最初からなかったと思えばいいじゃない」

――朝ドラのヒロインみたいな方ですね。

井手 私は帝国ホテルに30年勤めましたが、放蕩三昧もしました。というのは、喜久子妃殿下が亡くなって母が賜った6億円もの遺産を、詐欺に遭って騙し取られてしまったんです。そのことを母に打ち明けたら、こう言われました。

「最初からなかったと思えばいいじゃない」

 すごい人だなと思いましたよ。クーラーもない公営住宅で暮らしたあとは千葉に移って、私はハローワークで紹介されたマクドナルドで夜中に清掃する仕事に就きました。しかし母は文句も言わず、私を気遣ってくれました。

©文藝春秋

 2人で暮らすようになってから、なかなか聞けなかった昔話をよく聞かされました。亡くなるまで介護をして、最後は友達付き合いみたいでした。

「大変懐かしかった」と電話が…続いた“皇室とのつながり”

――平成30年、本を出版した翌月に、久美子さんは95歳で亡くなりました。現在の上皇上皇后両陛下をはじめ、天皇皇后両陛下、秋篠宮家、常陸宮家、三笠宮家、高円宮家などから、お花やお供えが届いたそうですね。

高松宮妃殿下卒寿のパーティー。皇族のお誕生日には各ホテルからケーキが届くという(『徳川おてんば姫』より)

井手 はい。賜物御礼のため記帳にうかがった際、母の著書を侍従長にお渡ししたんです。そうしたら後日、上皇后陛下の侍女長からお電話がありました。

「本をお読みになり、大変懐かしかったとおっしゃっていたので、それをお伝えするために電話しました」

 と聞いて、思わず背筋が伸びましたよ。なんとお優しい方なんでしょうか。

©文藝春秋

「家の重み」を感じ続けた人生…「小室さん・眞子さん結婚問題」を見たら…

――皇室も徳川家も、「家の重み」という点が共通します。久美子さんがご存命でしたら、小室圭さんと眞子さんのご結婚について、どうおっしゃったでしょう?

井手 皇族の結婚問題が芸能人のゴシップ同様に扱われることに呆れているでしょう。昭和と平成の皇室だったら、あり得ないことですね。当時は、喜久子妃殿下がしっかり仕切っていらっしゃいました。僭越ながら申し上げれば、今はそうした仲介や調整をされる方がいらっしゃらないのかもしれません。その意味で、これは秋篠宮家だけの問題ではないと思います。

 皇族はスターでもタレントでもなく、あくまで皇族です。それなのに皇室の中があからさまに見えるような世の中になってしまったところから、ぎくしゃくが生じているのではないでしょうか。「家」という存在を感じづらくなっている世の中かもしれませんが、その重みを背負って人生をかけて歩んできた母を見ている昭和の人間としては、国民全体で皇室の重さをもっと感じて欲しいと思いますね。

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構成=石井謙一郎

徳川おてんば姫

井手 久美子

東京キララ社

2018年6月14日 発売

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