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「2008年秋頃に男は離婚し、ひとり暮らしを始めています。しかしひとり暮らしの寂しさが募り、翌年に元妻へ復縁を申し込むも失敗。孤独感が深まり、次第に自殺を考えるようになったそうです。しかし1人で死ぬのは怖かった。そこで、“働かず元妻に迷惑をかけている”という理由で長男を道連れにしようという考えに至ったようでした」

 その後、男の心情は移り変わり、「家族は一緒でなければならない」という理由から、元妻や次男も道連れにすべきだと考えるようにもなった。そこで男は2011年4月、ついに実行に移す。

長男と酒を酌み交わした後、頭部に包丁を振り下ろした

「長男から家族みんなで遊びに行こうと誘われ、家族が一堂に会すことがあったんです。男は日中、家族と一緒に過ごし、その後に『寿司を買ってるから』という理由で元妻の家に上がり込みました。その際、包丁を数本、鞄に忍ばせていますが、まだ無理心中に対してはためらいがあったようです。

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 しかしその後に長男と2人で酒を飲み交わした。どんな話をしていたかはわかりませんが、酒の勢いも手伝ってか、明け方6時頃に長男に切りかかったのです」(同前)

 男は持ってきていた刃渡り15㎝ほどの出刃包丁を長男に向け、何度も頭周辺を刺した。長男は血だらけになりながらも男を玄関に押し出し、なんとか最悪の事態は免れることができたのだという。

「こうした経緯から、裁判では男の弁護側が、孤独によるうつ病といった精神疾患などを原因に減刑を求めています。しかし当時、男は仕事を辞めたにも関わらず、金を競馬に費やして自身の生活費にも困るような状態でした。裁判官は自身の行いが招いたことを打開するために、家族を犠牲にするのは『家族に対する甘え』と切り捨てて、懲役5年を言い渡しています」(同前)

 元妻に話を聞こうと自宅を訪れたが、報道陣の取材には固く口を閉ざしている。前出の近隣住民の女性はこうも話していた。

男が放火したクリニック ©文藝春秋

家族は新生活を始め、男は孤独を深めた

「事件後はよりいっそう近所付き合いを避けるようになってはったけど、事件後に一度だけまともに会話する機会がありました。私の家のテレビの音がうるさいと、お兄さんが直接文句を言いにこられたことがあるんです。特にトラブルにはなりませんでしたが、どうやらお兄さんが家でパソコン仕事をしていて、音が気になったみたいです」

 元妻や長男が新生活を始めた一方、男は刑期を勤め上げた後、出所してからも一人暮らしをしていたとみられている。またもや孤独な生活に苛まされていたのだろうか。「病院と男の間でトラブルがあった」という話もあり、府警の捜査の進展に注目が集まっている。

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