仮に賃金が安くても、国内の物価が安ければ生活しやすいという見方もできるが現実はそうはいかない。
私たちが日常的に購入するモノのほとんどは輸入で成り立っており、海外の経済状況から影響を受けてしまう。海外の方が豊かであれば、輸入品の価格が上昇するので、日本人が買えるモノの量が減ってしまうのだ。自動車はまさにその典型である。
日本人にとってクルマはもはや高嶺の花
自動車はグローバル商品なので世界中どこで買っても価格は同じである。
トヨタ自動車の1台あたり平均販売価格は世界経済に歩調を合わせ約20年で1.5倍になった。だが日本人の賃金は横ばいなので、日本人にとってクルマはもはや高嶺の花だ。
多くの若者が愛用するiPhoneは機種によっては1台10万円くらいするが、初任給が20万円の日本人と50万円の米国人では負担感の違いは大きいだろう。
近年、食品などにおいて価格を据え置く代わりに内容量を減らすという隠れた値上げ(いわゆるステルス値上げ)が増えている。内外の賃金格差というのは、こうした形でジワジワと日本人の生活を苦しめていく。
日本人の賃金が上がっていないのは、バブル崩壊以降、日本経済が成長を止めてしまったからである。
同じ期間で、諸外国は経済規模を1・5倍から2倍に拡大させたので、相対的に日本は貧しくなった。日本だけが成長から取り残された原因は、ビジネスのIT化を軽視し、従来の産業モデルにしがみついたことだが、これについては本稿の主題ではないので割愛する。
原因はともかくバブル崩壊以後の「失われた30年」で、日本経済はかなり弱体化しており、私たちはこの現実を前提に今後のキャリアや資産形成について考えなければならない。