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職ナシ、金ナシの元アイドルが赤の他人のおっさんと住んで3年…同居最後の日に起こったこと――2021年BEST5

2022/01/24

2021年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第1位は、こちら!(初公開日 2021年9月18日)。

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 元アイドルであり、現在はライターや作家として精力的に活動する大木亜希子さん。2018年の5月、会社員だった大木さんは会社に行けなくなり、やむなく休職。みかねた姉からの提案で、独り暮らしをする56歳の男性サラリーマン・ササポンさんとの一つ屋根の下での“共同生活”がはじまった。

 その様子とエピソードを綴った『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)が大ヒット。過度に干渉しないササポンさんとの時間によって大木さんが自分を取り戻す日々は多くの共感を呼び、この7月には『つんドル!~人生に詰んだ元アイドルの事情~』としてコミックにもなった。

 一方で、その生活は当初からササポンさんが定年退職するまでという「期間限定」のものだった。そうして訪れた、ササポンハウスでの最後の日――。

◆◆◆

大木亜希子さん

「それでは、ササポンこの辺で」

 全ての荷物を積み終えると、私は作業を手伝ってくれた彼に礼を言った。ササポンは「じゃ、お疲れさん」と呟くと、さっさと玄関口に戻っていく。3年間に及ぶ共同生活が最後の日であろうと、しんみりとした空気感は一切滲ませない。彼らしい、見事な別れ方だと思った。

「あの、今日が一応、最後の日なんで。良かったらコレ読んで下さい」

 私は彼のあとを追いかけて、1通の手紙を差し出す。それは、これまでの同居生活について感謝の言葉を綴ったものだった。ササポンは「ありがとう」と言うと、ズボンのポケットにそれを仕舞う。私からの手紙を喜ぶわけでもなければ、雑に扱うわけでもない。その姿は清々しいほど一貫していた。

 引っ越し業者のトラックが出発する。私も業者の後を追って、早く新居に向かわなければならない。歩き出す瞬間、思い立ってもう一度、彼のほうを振り向いて叫ぶ。