反省の色なし 女帝は「脅していない」と主張
控訴審ではこれまで、山本被告は1審判決で有罪となった自らの犯行を片っ端から否定していた。
瑠美さんの事件について、(1)「直接の死亡原因となった暴行行為はやっていないため、岸被告との共謀はなく傷害致死には当たらない」、(2)「瑠美さんは頻繁に外出しており監禁していない」などと主張。
しかし根本裁判長は(1)「瑠美さんを心身ともに支配して金銭の支払いを強要しながら虐待する意思を岸被告に隠すことなく示し、これに同調した岸被告が山本被告の意を酌んで瑠美さんへの暴力をエスカレートさせた」、(2)「瑠美さんは精神的に追い詰められ、恐怖心から自由な行動をするのが困難な状況だった。外出も10分前後の短時間にすぎない」といずれも山本被告の主張を認めなかった。
瑠美さんや別の被害者に対する恐喝についても、山本被告は「脅していない」「メイドカフェに行く費用を預かっていただけ」などと訴えたが、聞き入れられず減刑はなし。
山本被告に罪の意識はないのか、それとも暴力的な行いが相手にどれほどの苦痛を与えたかいまだに理解できていないのだろうか。
「ヤクザでもやらない」カッターナイフで爪を…
今年2月、「九州3児遺体事件」を起こした田中涼二被告は、約20年前に山本被告と婚姻関係にあった。拘置所で面会取材に応じた田中被告は、当時、山本被告とともに傷害、監禁などの罪で有罪となっていたことを明かした。そしてこのときの山本被告についてこう語っている。
「山本は車のシガーライターを男性の顔に当てていた。自分も(山本に)言われて、男性の手にあててしまった。山本はカッターナイフで爪を剥いでもいた。被害者は叫んでいました。見ているだけで辛かった。ヤクザでもやらないとんでもない発想ですよ。それをあの人は楽しんでいた。女じゃない。
自分も、本当に馬鹿なことをしてしまいました。いいように使われてしまったんです。山本とは二度と関わりたくないので、今同じ場所(福岡拘置所)にいますが、手紙を書く気にもなれません」
陰鬱な雰囲気のなか、裁判が進み、閉廷となった。そこで女性の傍聴人がこう叫んだ。
「この人殺し!!」
記者が傍聴している限り、両被告から反省の様子を感じ取ることはできなかった。