唐突に始まった5時間のお説教
「それでね、その前に私一番聞きたいのは、9月ですよね、文春さんと裁判が終わったのは……」
初めましての挨拶もそこそこに、5時間にわたる長いお説教は唐突に始まった。弁舌は一瀉千里、声は張りがあって滑舌よく、眼光は鋭い。メリー氏は80代後半とは思えないほど矍鑠(かくしゃく)としていた。
メリー氏の演説が始まると、事務所スタッフも弁護士も強張った表情のまま虚空を見つめて一言も発さなくなった。広い会議室に響き渡るのはメリー氏の声だけだ。
記事ではコンパクトにまとめているが、本筋とは無関係なこんな“脱線”が何度も繰り返された。
メリー 文藝春秋という看板を背負ってやってたらね、もっといいことを書いてくだすったら文春の社長にお話しして「やっといい人がわかりました」と私は言いたいけれども。
――はい。私はデスクをやり始めて3年9カ月なんですけれど……。
メリー 嘘! うちだったらまだデビューしてませんよ!
「ちょっと飯島呼んでくれない」
そうしていよいよ“派閥問題”に話題が差し掛かった時、メリー氏のテンションは最高潮に達した。
「ジュリー以外に(誰かが)派閥を作っているという話は耳に入っていません。もし、うちの事務所に派閥があるなら、それは私の管理不足です。事実なら許せないことですし、あなた方にそう思わせたとしたら、飯島を注意します。今日、(飯島氏を)辞めさせますよ。仕事の大事なことって、そういうことだから」
メリー氏は思い立ったように男性スタッフを手招きし、記者も予想外の行動に出たのだった。
「ちょっと飯島呼んでくれない。いま飯島呼んで。どこにいるのか知らない?」
当の飯島氏を呼んで、直接説明させるというのだ。会議室全体に緊張が走ったのは誰の目にも明らかだ。これが「公開粛清」の幕開けだった。
俄に騒然とするスタッフ。同席していた事務所の男性スタッフが飯島氏に急遽連絡を取り始めた。飯島氏の都合などお構いなしと言わんばかりにメリー氏は平然と話し続ける。