未来の廃墟、降り注ぐ金色の雨
これら美しさと驚きの詰まった作品を手がける「ユージーン・スタジオ」とは、寒川裕人が率いるアーティストスタジオ。絵画・彫刻・映像といったジャンルにはまったく囚われず、自在に表現を展開している。今展でもこちらが歩を進めるたび、ありとあらゆる趣向に彩られた室が現れて、そのつど新しい体感を味わえる。
《海庭》を通り抜けたあとも、めくるめく作品世界は続く。映画『2001年宇宙の旅』のラストシーンに出てくる白い部屋を再現し、それを破壊し風化させた壮大なインスタレーションは《善悪の荒野》と名付けられている。映画の世界が実際のモノとなって飛び出してきて、しかもそれが廃墟となったさまを目の当たりにするとは。驚きの視覚体験としか言いようがない。
近くに寄って作品を眺め渡していると、これから容易じゃなさそうな人類の未来についてあれこれ考えが巡り、背筋がひやりとしてくる。
美と想像力がそこかしこに溢れる空間
奥へ進む。暗転させた室内があるので踏み入ると、そこでは上空から細かい雨のようなものが降り注いでいた。《ゴールドレイン》という作品で、キラキラ光って舞い落ちていくものは金箔と銀箔の粒子だという。光景がひたすら美しいとともに、古代から未来へと続く悠久の時の流れが、ここに可視化されているとも思わせる。
こうして見ていくと、ユージーン・スタジオの作品はあまりに多様で、捉えどころがない。ただ同時に、作者の追い求めているものがどの作品にも滲み出ているとはっきりと感じられる。
それがどんなものかといえば、まずは美しいものを見たい、美しさを感じ取りたいという飽くなき欲求。そしてもうひとつは、人の想像力の正体を見極めてやろうという強い野心だ。人の想像力というのはどこからやって来て、どうかたちづくられていくのか。ユージーン・スタジオが創作を通して探り続けているのはそこだろう。
美と想像力がそこかしこに溢れる空間を、じっくり堪能されたい。