モデルを撮影した写真に、直接刺繍を施してオブジェ化し、感情やストーリーを表現する……。

 2000年代に作品発表を始めるや否や、強烈なインパクトを残す作品群で観る側の度肝を抜いてきたのが、清川あさみだった。

 広告ビジュアルや空間デザイン、音楽ユニットYOASOBIの最新MV『もしも命が描けたら』の監督まで、ジャンルを軽々と超えて創作を続ける彼女が個展を開催中だ。銀座 蔦屋書店GINZA ATRIUMでの「TOKYO MONSTER, reloaded」には、東京をテーマとしたいくつかのシリーズ作品が並ぶ。

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一人ひとりが「モンスター」に見える

 出身地の淡路島を出て、清川あさみが東京へやって来たのは1990年代のことだった。当時何より刺激を受けたのは、街行く人々の姿。一人ひとりが思うまま身にまとうファッションは、自信と個性に溢れて見えた。

 そのころ感じた思いが、心の内側に熾火のように残っていたのだろうか。清川はずいぶんあとになってから、90年代のストリートスナップ写真の表面に刺繍を施し始める。そうして2014年、「TOKYO MONSTER」と題する作品シリーズを発表した。

 

 街に佇む男女は刺繍によって顔や身体の輪郭が変容している。まるで一人一種のモンスターとして、アイデンティティを強烈に主張しているかのようだ。

 さらに時を経て、清川は2021年に「TOKYO MONSTER(2020-)」シリーズを生み出す。こちらはSNSの画像や最近撮影されたスナップショットを素材にして、2014年のものとは違う手法でつくられた作品である。