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印象派とは“目に優しく心地よい”だけのものなのか イスラエルから届いた印象派作品が見せる19世後半の“転換”

アート・ジャーナル

2021/12/11

 モネやルノワールらの印象派絵画を、日本の美術ファンはこよなく愛す。

 でもそれは本邦に限ったことじゃない。たとえば遠く離れたイスラエルの地でも、印象派はやっぱり大人気。同国最大級の文化施設「イスラエル博物館」では、20世紀最大の考古学的発見とされる「死海文書」などと並んで、印象派・後期印象派絵画の一大コレクションを有している。

 来年、日本とイスラエルの外交関係樹立70周年を記念して、イスラエル博物館ご自慢の絵画群がはるばる海を渡ってやって来た。三菱一号館美術館での「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜--モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」展だ。

 

「水」の表現が印象派の真骨頂

 会場に足を踏み入れると、まずは水辺の風景をモチーフにした作品の数々と出くわす。移り変わる自然の美を画面に写し取ろうとした印象派にとって、時間帯や季節、天候によって刻々と表情を変える海や川の水面は、格好の画題だったのだ。

 最初はカミーユ・コローにフランソワ・ドービニー、ギュスターヴ・クールベやウジェーヌ・ブーダン……。印象派の登場以前から鮮やかに水の表情を描き留めていた画家たちの作品が並ぶ。それらに続いてアルフレッド・シスレーにポール・シニャックら印象派ど真ん中の面々の作例がある。その後にハイライトとして登場するのが、おなじみクロード・モネ《睡蓮の池》だ。

クロード・モネ《睡蓮の池》

 印象派の理念を力強く推進したモネは、この世を照らす光が事物にどんな影響を及ぼすのか、徹底的に探究した画家。自宅の庭に蓮池をつくり日がな眺めて暮らし、水面とその反射、光の透過具合を観察し尽くしつつ睡蓮の連作を描いた。 

 今作はそのうちの一枚で、穏やかに澄んだ水面に雲や周囲の樹々が映り込んでいるさまが幻想的だ。観ているだけで陶然とさせられる。

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