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戦時中の極限状況のミステリー「いくさの底」が評価された理由

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作家・古処(こどころ)誠二氏

 迫真の臨場感で戦場を描き続ける作家・古処(こどころ)誠二さん。『いくさの底』で第71回毎日出版文化賞を受賞し、11月30日には授賞式が行われた。

「戦争文学に特化せず〈文学・芸術〉という広い部門で評価されたことが特に嬉しいです。戦争を書くというより、あくまで書きたい小説に適した舞台を選んでいる意識なので」

 日本軍が駐屯したビルマの村で指揮をとる賀川少尉が殺害された。通訳として同行する軍属の依井と杉山准尉は殺害の事実を伏せたまま犯人を探るが――。周囲に敵軍が潜み、村民は信じきれず、日本人内部にも軍隊と民間の溝が横たわる。極限状況のミステリーとして、小誌レビューでも★4と高評価を受けた。

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「時代的説明に気をとられずにエンタメに徹したのが良かったのでしょうか。戦場を舞台にすると表現に慎重にならざるをえず、誤解を正すために文章を費やすことも多かった。今回それを排して物語に集中できたのは、前作『中尉』を保阪正康さんが書評してくださったことと、編集の担当さんから客観的なアドバイスをいただいた影響が大きいと思います。余計な説明なしでも大丈夫だと安心し、同時に読者を信頼して書けました」

 時代、地域により状況の異なるビルマ戦線への興味は尽きず、今後も書きたいという。

いくさの底

古処 誠二(著)

KADOKAWA
2017年8月8日 発売

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戦時中の極限状況のミステリー「いくさの底」が評価された理由

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