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「先がわからないことに面白さを感じる」ところは現在にいたるまで変わらない。『カムカムエヴリバディ』への出演を決めたのも、戦前から現代まで3世代にわたる物語を紡ぐため、朝ドラ史上初めてヒロインが3人になると知ったからだ。彼女によれば、そのいきさつは次のようなものだったという。

《先が見えているものより、どうなるかわからないことにすごく惹かれるタイプなんですね(笑)。『じゃあ、やってみよう』とお引き受けしました。プロデューサーの方からお手紙をいただいて、物語に私という存在が必要だとまっすぐに言ってくださって、ありがたいことだなと思いました》(※2)

©Getty

 つくり手から求められていると感じたことが出演の動機になった点も、デビュー作と同じだ。彼女にとって初出演となる朝ドラという枠自体も魅力であったらしい。『カムカムエヴリバディ』の放送直前にはこんな話もしている。

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40代後半の深津が演じる「18歳のヒロイン」

《朝ドラでは作る側と観る側に、ある種の共犯関係みたいなものが成立している。そこが舞台のようだなと思います。たとえば舞台では、私が『15歳の少女』と言えば、観客はそう思って観てくださる。歌舞伎も年齢や性別に関係なく、役を演じますよね。それは舞台ならではですし、大きな嘘を大胆につくことができる。嘘とわかっていて、お客さんはそれを楽しむ。朝ドラにもそういう魅力がありますよね。それは朝ドラという『型』があって、そしてその型がとても素敵で、心に響くものだから、105回(引用者注:朝ドラ第1作『娘と私』以来の作品総数)も続いているのだと思います》(※3)

『カムカムエヴリバディ』の公式ドラマ・ガイド(NHK出版)によれば、同作の2代目ヒロインのるいは1944年9月生まれ。深津の番組登場時の時代設定は1962年で、目下、彼女は17歳から18歳にかけてのるいを演じていることになるが、実年齢が40代後半とは思えないほど、まるで違和感がない。それは朝ドラという「型」の存在ばかりでなく、彼女自身のこれまでの舞台経験によるところも大きいように思う。