かっこよく踊る、みたいな「向上」を求めない
――監修を務めるいとこの丸山泰幸医師とともに、心臓病を抱える患者さんを対象にワークショップをされたそうですね。これまでの若い世代の「生徒」とはまったくタイプが異なるかと。
SAM 最初は70~80代の循環器系の疾患を持つ方に協力してもらったんですが、集まってくれた皆さんがとにかく怯えている感じで。「今から私たち、何させられるの?」みたいな。
接し方も、はじめはとても気をつけました。かっこよく踊る、みたいな「向上」を求めないとか。「難しくてできないわよ」と言われた時も「できますよ」と返すのではなく、「難しいですよね。無理しないでください」という感じで、寄り添うようにしています。今はだいぶ自然にできるんですけど、最初は大変でした。
――「上達」や「スキル向上」といった縦方向に伸ばすことが目的ではないレッスンって、SAMさんとしてもたぶん初めてのことですよね。どんな感覚ですか。
SAM 逆に、達成感がありますね。踊ったことがない人たちがはじめてダンスと触れ合って、最終的にすごい笑顔になるんですよ。
冷え性でずっと手が真っ白だったおばあちゃんが、「手がこんなピンクになったのはじめて!」と言ってくれたり、100メートルも歩けなかったおじいちゃんがダンスを続けていたら10キロ歩けるようになったり。
『EZ DO DANCERCIZE』のヒットで気づいたこと
――代々続く医者の家系の中で、ダンスというまったく違う道に進んだSAMさんが今、人々の健康に寄与しているということに、丸山家の「血」を感じてしまいます。
SAM 40代くらいまでは若い子のダンススキルを向上させて、自分のDNAを下に伝えていかなきゃ、みたいな思いが強かったんです。でもTRFの20周年記念でリリースしたエクササイズDVD『EZ DO DANCERCIZE』がヒットしたことで、「あれ?」と思って。こういう形で求めてもらえるものがあるんだ、と思えたんですよね。
――今やシリーズ累計300万枚を突破する人気シリーズですが、当時はまさかこんなに売れるとは思わなかったですか?
SAM 正直、「ハウツーもののDVDで、TRFの曲で踊りたい人なんかいないでしょ」と思ってました(笑)。2、3万枚売れたら御の字くらいに考えていたんです。
でも『EZ DO DANCERCIZE』が大ヒットしたことで、「体に効くダンス」に需要があるとはっきり感じることができました。だから「ダレデモダンス」の開発は、『EZ DO DANCERCIZE』の延長線上にあるんです。