「窓から人の顔が出てきた」のぞきの犯人は…
ジョージさんが働いている間、最も困った事件は、「のぞき」が出没したことだった。
「3階の部屋の利用者から『窓から人の顔が出てきた』という苦情が何度か入っていたんです。その部屋の窓の外は、隣のビルについている非常階段の踊り場に面していて、窓が開いていれば確かにのぞける位置関係になっていました。
ただ、実際には、かなり身を乗り出して危険な体勢にならなければ部屋の中は見えないし、窓にカギをかけたうえで養生テープでグルグル巻きにして開かないようにするなど、対策もしていました。なので、いつものクレームだという感じで無視していたんです。
ラブホテルを利用するお客さんって、部屋に隠しカメラを仕掛けられてるんじゃないかって猜疑心を持つ人が多くて、そういうクレームがかなりあるんです。もちろんそんな仕掛けはないですし、この手のクレームは聞き飽きるほど聞いていましたからね。
ところがある日、窓の養生テープが全部剥がされて窓が開いていたんです。それで初めて、もしかして本当にのぞきがいたのかもしれないとなって調べたところ、隣のホテルの従業員がのぞいていたことが判明しました。警察は呼ばずに示談で済ませましたよ。だって、被害者になるのぞかれたお客さんは、どこの誰だかわからないし」
2階の窓から飛び降りて…延長料金を払わない客
ラブホテルでは、入室時に料金を先払いするケースがほとんどだ。そのため、金銭トラブルは少ないと思われがちだが、そうではなかったという。
「よくあるのは部屋にクレームを付けて帰り際に『返金しろ』と言ってくるお客さん。それと、所定の時間を過ぎて発生した延長料金を支払わずに帰ろうとするお客さん。ゴネるだけならまだいいほうで、2階の部屋の窓から飛び降りて逃げた客もいました」
男の客は素性が分からないため、ほとんどがホテル側の泣き寝入りだったが、所属する店が分かっている常連のデリヘル嬢がトラブルを起こすケースもあったという。
「男性は無理でも、女性が何かやった場合は分かることがあるんです。たとえばデリヘル嬢の人でホテルから備品をこっそり持ち帰っていた常習犯がいましたね。部屋に置いてあるものならまだいいんですが、彼女の場合、ホテルの備品が置いてある倉庫部屋に入ってゴッソリ持っていってました。たまたま従業員が目撃して発見したんですが、盗まれていたのが安物のシャンプーとかだったので、特にことは荒立てませんでしたけど」