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大量になくなる「あの備品」

 ちなみに、コロナ禍になって以降は、ある備品のなくなり方が酷かったという。

「最初の緊急事態宣言が出た時期にはトイレットペーパーが不足するという噂が流れたこともあって、部屋に備え付けてある予備のものまで大量に持っていかれましたね。清掃のたびに大量に補充していました。ただ、ホテルはこうした備品に関しては、普段から安定して仕入れることができるように一般の流通ではなく、ちゃんと業者と契約していて、しっかり確保できていたので不足することはなかったですけど」

 コロナ禍が始まって以降、一応は入口にアルコール消毒液を置くようにはなったが、それ以外は客の体温を測ることもなく、特に変わらず営業を続けていたという。しかし、客の中には自分なりの対策をする者もいたという。

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「昔から常連さんだった60代の男性客がいるんですが、新型コロナ流行後にはタオルを所定量の4倍くらい要求してくるようになりました。自分で持ってきたアルコールでドアノブを消毒していたようでしたから、おそらく部屋中を自分で消毒したんでしょうね。そんなに警戒するならラブホなんか来なければいいのにとは思いますが」

 幸い、従業員や利用客の中から感染者が出ることもなく営業を続けることができた。しかし、新型コロナ関連の補助金をめぐっては疑問に思うことがあったという。

法的には、性風俗ではなくて一般のホテルの区分だが…

「性風俗に関わる産業には、公的な補助金は一切出ませんでした。一応はホテルとして申請をしたんですが、行政機関の監査が入って却下されました。確か『休憩があるから』『コンドームが置いてあるから』とか、そんな理由でした。

 でも、法的に言えば、うちのホテルは性風俗ではなくて一般のホテルの区分に当てはまるんです。たまたま部屋にコンドームが備え付けてあるだけの普通の宿泊施設という建て付けです。風俗の営業権を持ってやっているのは業者さんで、単に近くにあるうちのホテルを利用しているというだけ。それなのに、補助金に関してだけは『性風俗だから』という理由で補助金はおりませんでした」

©️iStock.com

 ホテルはコロナ禍によって売り上げが激減。ジョージさんはシフトが削られた上に、雇用主と仲たがいしたこともあって、21年5月に退職している。

「きつい仕事でしたけどいい経験でした。どんな状況になっても、人間って下半身の欲望は止められないんだな、と実感しましたね」