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坂の都市の“いまだかつて例のないナゾの終着駅”「長崎」には何がある?

2022/01/24
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先代の「長崎」だった浦上駅

 浦上駅は1897年に開業した長崎市内では最も古い駅だ。当時の九州鉄道が長崎まで線路を延ばした折にその終着駅として開いた。最初はこちらが長崎駅と呼ばれていた終点のターミナルだった。

 その頃の長崎は今よりも海の占める範囲が多く、限られた陸地はほとんどが密集市街地になっていた。16世紀にポルトガル船がやってきて以来の貿易港にして江戸時代には国内で唯一西洋に開かれた貿易港だったわけで、かつての長崎は今以上に人やモノが集まる大都会。それがまた、山に囲まれた坂だらけの入り江の町であったから、鉄道のターミナルを設けるだけの余白が乏しかったということなのだろう。

 結局、入り江(長崎湾)の埋め立て工事が進められることになり、そこで生まれた新しい埋め立て地に現在の長崎駅が開業した。1905年のことで、その際に最初の長崎駅は浦上駅に改称している。

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築2年もたっていない高架駅

 ともあれ、高架に乗ったまま特急「かもめ」はどんつきの長崎駅に滑り込む。長崎駅が高架になったのは2020年3月。だから2年も経っていないできたてほやほやの高架駅だ。新宿駅のようにJRだけで50万人以上が毎日使っている駅ならばともかく、長崎駅はコロナ前でも1日1万人程度。それもあってか、いまでも新品ピカピカのままの駅である。

 

 高架の長崎駅のすぐ隣には、もうひとつ立派な高架のホームが見える。完全に並んではいるものの敷地はぴったりと分かれていて、相互に行き来できるようにはなっていない。このお隣のホームこそ、来たるべき西九州新幹線のホームというわけだ。むろん、開業はまだ先のことなので新幹線のホームに立ち入ることはできない。

 

 入ることのできない新幹線ホームをいつまでも眺めていても仕方がないので、階段を降りて長崎駅のコンコースに向かう。コンコースも真新しく立派なもので、清潔感もたっぷりだ。古い駅舎も味があっていいけれど、新築駅舎も悪くない。新築マンションに憧れるような……なのかどうなのか。