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個性豊かな宿老たちを三谷幸喜はどう描くか

 和田義盛【横田栄司】は頼朝によって侍所別当という要職に就けられたが、実際は「武辺気質の典型的な鎌倉武士」だった。だが義盛は妥協することを知らず、声高に自己主張するので、周囲から浮いた存在になっていく。その結果、北条氏との間で疎隔が生じ、武力に訴えざるを得なくなる。だがその決戦に敗れ、一族もろとも滅亡する。過酷な時代なので利己主義にならざるを得なかったのは分かるが、もう少し利他を考えれば、また違った人生を歩んでいたことだろう。

 安達盛長【野添義弘】は頼朝に影のように付き従った補佐官で、鎌倉幕府草創期の功績はとくに大きい。よく言えば「鎌倉幕府創設の陰の立役者」だが、頼朝の秘密警察的役割を担っていたのも事実だろう。頼朝の死後は出家して影が薄くなるが、梶原景時の弾劾では積極的に動き、幕府を安定へと導いていく。

伊東潤氏 ©文藝春秋

 三浦義澄【佐藤B作】は鎌倉時代を象徴するような三浦一族を率い、幕府の創業に大きな貢献をした。だが面白い逸話もなく、義澄がどんな男だったかはなかなか見えてこない。頼朝挙兵時には54歳という高齢だったので、分別盛りで目立たなかったのかもしれない。いわば「自己顕示欲が少ない沈黙寡言な人」たったのではないだろうか。

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 その他のメンバーを一言で言うと、以下のようになる。

 二階堂行政「鎌倉幕府の屋台骨を支えた実務官僚」

 中原親能「京都外交を担った有能な文士」

 三善康信【小林隆】「平衡感覚に優れた最高裁長官」

 八田知家「幕府の北関東支配の要」

 足立遠元「文武両道に通じたご意見番」

「13人の宿老」には、これだけ個性豊かな人物がそろっていたことになる。その実像は別としても、『吾妻鏡』が個々の人物像を生き生きと描き出してくれたことで、鎌倉時代をより身近に感じられることだろう。

 さて、いよいよ大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が始まる。脚本家の三谷幸喜氏が、彼らをどのように描くか、今から楽しみだ。

夜叉の都

伊東 潤

文藝春秋

2021年11月22日 発売