分裂理由は「カネの問題」
池田の発言にある「名古屋方式」とは、2005年7月に弘道会出身の司忍が山口組の6代目組長に就任して以降の組織運営を指す。弘道会の活動拠点が名古屋市にあるために、このように表現された。
会費と呼ばれる上納金の徴収のほかに、押し売りのようなミネラルウオーターやコメなど日用品の買い取りの強制、盆暮れなどでの金銭の特別徴収など、6代目体制になって以降のこうしたカネをめぐる不満があったが、神戸山口組の実態は、「名古屋方式にも劣る、それ以下の悪政」と強い口調で非難した。
神戸山口組が6代目山口組から離脱した理由のひとつがカネだったのと同様に、織田や池田らが離脱した主な理由もカネだった。警察庁幹部は当時、突き放した感想を述べていた。
「神戸(山口組)が6代目(山口組)から脱退したのは、さまざまな名目でカネを取られることが苦しくて耐えられないということだった。その問題を解決するということで神戸山口組が発足し、カネがかからない組織運営をしていくというはずだった。任侠団体山口組が出て行ったのは、それでもやはり内部でカネの問題が持ち上がり、再度、分裂したということ。問題は何もかもカネだ」
代表の織田が狙われ、殺人事件勃発
新組織の発足後、すぐに代表の織田が狙われる事件が発生した。
2017年9月、神戸市内を走行中の織田らが乗った3台の車列の先頭車両が、思わぬ方向から出てきた車に衝突された。車から降りた織田のボディーガード役の組員が、相手の車の男と口論の末に射殺された。殺害された組員は相手と言い争いになった際に「撃ってみんかい」と大声で怒鳴ったという。
兵庫県警は織田を狙った計画的な襲撃事件とみて捜査、現場周辺の防犯カメラの画像などから、神戸山口組系組員らを実行犯として割り出し、殺人容疑で指名手配した。
事件の引きがねは、任侠山口組と名称を変更していた新組織が4月に引き続き8月末に開いた2度目の記者会見だとされた。本部長の池田が報道関係者を前に、2015年8月の神戸山口組の結成についても、「山口組史上例をみない『大型分裂詐欺事件』であったということです」と批判。会費のほかさまざまな名目でカネの徴収がされていたと内情を暴露した。