建設費用10兆円超と言われる「夢の超特急」計画――だが最近は、自然環境への影響を懸念する静岡県の反対、トンネル工事の事故など、問題を指摘されることが増えている。
「文藝春秋」3月号では、計画の立ち上げから関わってきたJR東海の葛西敬之名誉会長が登場。「21世紀最大のインフラプロジェクト」とも言われる、その壮大な建設計画の意義と日本経済にあたえるインパクトをあらためて語った(森地茂氏、松井孝典氏との座談会「リニアはなぜ必要か?」)。
世界に類を見ない大回廊都市が生まれる
「リニア中央新幹線の効果として、第一に挙がるのは移動時間の大幅な短縮です。現在、東京―名古屋間は新幹線で1時間半かかるところがリニアだと40分、東京―大阪間は2時間半のところが67分になる。
そうすると何が起こるかと言うと、東京・名古屋・大阪は、これまで以上に機能統合が進む。リニア中央新幹線開業後には世界に類を見ない大回廊都市が生まれるでしょう」
東京―名古屋間には、山梨の甲府、長野の飯田、岐阜の中津川といった新駅が作られる。太平洋ベルト地帯に比べると開発が遅れてきた日本の内陸部の発展も期待できると葛西氏は断言する。
「高速鉄道は途中駅にも停車するため回廊地域を統合する効果が極めて高いと言えますね。中央新幹線の実現は日本が他国にはない経済発展のための強固な基盤を得ることを意味します。日本が豊かになるための大きなアドバンテージを得るということであって、これほど経済や暮らしにインパクトをもたらすインフラは今後出てこないでしょう」