「バンドのメンバーに1人はオシャレな人がいるんです」
速水 ちなみに、どのあたりのLAメタルが好きだったんですか?
野宮 モトリー・クルー、ラット、ポイズンとか(笑)。高校生の頃はキッスがすごく好きで。その前はデヴィッド・ボウイやマーク・ボランなどグラムロック。ちょっとビジュアル系っぽいのが好きなんです。ダサいなとは思いますけど(笑)。
速水 え、ダサいと思って聴いてたんですか?
野宮 オシャレではないと思いますよ。ただ、バンドのメンバーに1人はオシャレな人がいるんです。エアロスミスだったらジョー・ペリーとか。
速水 男がメタルを好きになるのはビジュアル関係ないので、そこは大きな違いですね。グラムロックにしろ、ラメ入れたりとか普通の男は真似しちゃダメ。
おぐら ROLLYさんとかは完全にものにしてますけど。
野宮 ROLLYはかっこいいですよね。私がピチカートにコーラスで参加していた頃、すかんちと一緒にツアーを回ったことがありました。
速水 いつぐらいの話ですか?
野宮 1988年か1989年だと思います。ソニー時代。あれは面白かったなぁ。
速水 そういうロックの要素は、小西さんには全くないですよね。
野宮 そうですね。だから小西さんはロックミュージシャンに対する憧れがあるってよく話してました。ピチカートでワールドツアーをする時は、ブラボー小松というギタリストを入れて、基本は3人編成みたいな感じだったんですが、そのブラボー小松はギターもルックスもグラム系なんです。だからその頃はかなりキッチュなグループに見えたと思います。
「自分の声はロックよりテクノポップの方が合っていた」
おぐら 野宮さんはご自身でロックなりメタルを歌いたいとは思わなかったんですか?
野宮 自分の声がロックには向いてないとわかっていたので。しかも私がデビューした1981年頃はニューウェーブの時代で、テクノポップの方が声に合っていたんです。ただ私の曲は打ち込みではなくムーンライダーズが演奏していましたけど。
おぐら その時代、女性ボーカルでテクノポップといえばプラスチックスとかはかっこよかったですよね。
野宮 私も大好きでした。佐藤チカさんは憧れの人です。
おぐら もしピチカートがなければ、そういう路線もあったかもしれない。
野宮 ロックでテクノポップ、あったかもしれませんね。
速水 逆に、ピチカートの世界観を表現する素養はどういうところから?
野宮 服はもうほんとに子どもの頃から好きでしたし、60年代に母親が着ていた服や当時流行っていたファッションにも憧れていました。そういう部分では小西さんたちが目指す世界観と共通していたので、わりとすんなりできましたね。
おぐら ピチカートの曲は、タイトルからジャケットから衣装からミュージックビデオまでたくさんの引用元があって、当時それを川勝正幸さんがひとつひとつ丁寧に解説しているコラムを読みながら「うわぁ〜情報量が多すぎる〜」って思ってました。
野宮 作るほうはもちろんですけど、追いかけるほうも大変でしたよね(笑)。
(#2に続きます)
写真=山元茂樹/文藝春秋