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「医療不要」患者が20年間入院、無許可の脳摘出解剖…

 捜査の過程で法人税の脱税や、無資格の患者が注射などの医療行為を行っていたこと、さらには当時の院長である石川氏自らゴルフクラブで患者の頭などを殴っていたことなどが次々に判明し、大きな騒動となったのだ。

 その後に栃木県衛生指導部が実地調査を開始すると、酒に酔っただけで20年間も入院させられた「医療不要」患者の存在も明らかになった。国際的な批判も浴び1987年に行われた入院制度改革のきっかけともなった大事件だ。強制入院である医療保護入院に必要な精神保健指定医の制度も明確化された。

 石川氏には無資格の患者や看護師に医療行為をさせたり、保健所の許可なしに死亡した患者の脳の摘出解剖をしたりした罪などで懲役8月、罰金30万円の実刑判決が下り、医業停止の処分も受けた。しかし90歳を過ぎたいまも報徳会のトップに君臨しており、現場にも出ている。今回のケースでも江口さんを直接診察しているが、石川氏には患者の意志に関係なく入院させる医療保護入院を決める指定医の資格はない。

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 江口さんのケースが医療不要の患者を入院させたと裁判所により認定された場合、事件発覚から約30年にわたって、宇都宮病院の悪しき体質が改善されていないことになる。

インタビューを受ける江口さん ©文藝春秋

 文春オンライン取材班が、江口さんの主張について宇都宮病院に文書で事実確認を行った。

宇都宮病院に事実確認。その見解は…

 以下のように回答した。

「江口氏についてのご質問の件については、訴状等を拝見していないのでご質問に対して現段階での当院の見解を発表できるわけではありませんが、当院において不当入院という事実はございません、直接取材につきましては、訴訟の進行を見ながら判断させていただきたと存じます」

 一方、江口さんの支援者は取材に対し、こう主張している。

「病院側としては収入が増えることから、認知症でなくとも、認知症と診断し医療保護として入院が必要のない患者を入院させているケースはほかにもあると推察されるが、診察室という密室の場で何があったか調べることは難しく、病院による認知症の判断を裁判で覆すのは難しい。ただ、今回のケースは客観的に認知症でないことを示すカルテなどの証拠があるため、江口氏の主張は法的に受け入れられると確信している」

宇都宮病院の医師が、江口さんのかかりつけ医に申し送りをした資料には《精神的に問題なく、家庭内の問題で、ほとんど強制的に当院に入院させられてしまったようです》と記載されている

 

 果たして江口さんは認知症だったのか、そして強制入院や薬の処方は適正な範囲で行われたことだったのか。今後、法廷の場で争われることになる見込みだ。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。