利益は「全然把握していません」
これらの疑惑を尾﨑氏に直接質した。
――再生医療の審査で、順朋会はどれくらいの利益を得たのか。
尾﨑 いや、僕は全然把握していませんよ。全然関係ないから。人件費とか、いろんな手数料で相殺されていると思っています。
――循環器が専門の尾﨑会長が、歯科の再生医療を審査する理由は。
尾﨑 じゃあ例えば、東京都医師会でコロナ対策を私がやっていますけど、私は循環器の医者だから、コロナのことは言っちゃいけない、っていう話なんですか?
そして利益相反の疑いについて繰り返し問ううち、尾﨑氏は利益相反を認めたうえで、当局に責任を転嫁するような言葉を発した。
――もう一度聞きますが、利益相反の認識は全くない?
尾﨑 委員会をつくる時、「利益相反する人を入れてはいけない」というのは、どこにも書いていないですよ。我々が内緒で委員会に入ったのなら糾弾されるべきだけど、ちゃんと利益相反があるメンバーで届け出をして認められているわけだから。あとは厚生局の問題だと思いますよ。
トップとしてのモラルを問う
尾﨑氏は医師会内で隠然たる影響力を持ち、5選を目指していた横倉義武・前日本医師会会長に引導を渡し、現在の中川俊男・日本医師会会長を誕生させた立役者とされている。
「次期日本医師会会長候補の筆頭」(医師会関係者)との呼び声も高い。
コロナ禍において医師会に厳しい目が向けられる中、率先して襟を正すべき立場の尾﨑氏は、疑惑について苦しい強弁を続けるのだった。
尾﨑氏の闇に迫った岩澤倫彦氏のレポート「尾﨑治夫都医師会会長『疑惑のカネ』」は「文藝春秋」3月号(2月10日発売)に掲載されている。