2年前に新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、テレビでおなじみの顔になった東京都医師会会長の尾﨑治夫氏(70)。
政府の観光政策「Go Toキャンペーン」に対して「Not Go Toキャンペーン」を提案し、「政治家は医療現場を見に来い」と強烈に批判。昨年の東京五輪でも「今の状況では開催困難」と開催中止を訴えるなど、政府にも忖度なしの直言居士として世間の注目を集めてきた。
だが、こうした表の顔とは裏腹に、尾﨑氏には医療審査にからむ重大な疑惑が存在することが、ジャーナリストの岩澤倫彦氏が「文藝春秋」に発表したレポートで明らかとなった。
循環器内科なのに歯科医療で独占的に審査
2012年に山中伸弥・京都大学教授が「iPS細胞」でノーベル賞を受賞したこともあって、「再生医療」と呼ばれる医療技術が身近なものになってきた。人体から取り出した細胞を培養・加工するなどしたあとに再び人体に戻すことで、身体の失われた組織や機能を再生させるものだ。近年では歯科治療や美容整形など、様々な分野でこの技術が使われるようになっている。
この再生医療を行うには、全国に約160ある「認定再生医療等委員会」の審査を受ける必要がある。
尾﨑氏は循環器内科の医師で、東京都東久留米市で「医療法人社団順朋会おざき内科循環器クリニック」を開業しているが、そこにも「認定再生医療等委員会」が設置され、尾﨑氏が委員長を務めている。
ところが――同委員会は歯科医療にからむ再生医療の審査を独占的に引き受けていたことが、岩澤氏の調査で明らかになった。
現在、日本全国で届出されている再生医療の計画のうち、比較的低リスクの「第三種・治療」に分類されるものが約3500件ある。そのうち、順朋会の審査件数は約1300件にも及ぶ。じつに全体の約4割を占めているのだ。
過去に同委員会がおこなった累計の審査件数は約1700件もある。
その内訳をみると、「CGF」という顎の骨などの再生医療に関する審査が累計で約1400件と、圧倒的に多い。