14日、外食大手「ワタミ」は、国内で展開する居酒屋約270店のうち、約40店を年内で閉店する方針を明らかにした。新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績悪化を受け、採算が見込めない店舗を閉鎖するほか、営業店舗の業態転換を進め、経営の立て直しを図るという。

 ワタミを巡っては、新入社員の過労自殺や営業所長の残業代未払いをはじめ、その“ブラック体質”を「週刊文春」は報じてきた。構造改革で本当にワタミは変われるのか。社長に復帰した創業者の渡邉美樹氏(62)は労働環境改善を掲げてきたが、昨年11月「週刊文春」は、執行役員の“残業要求”とも呼べる音声データを入手していた。当時の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2021年11月25日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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 大手外食チェーン「ワタミ」の執行役員が、社員に対し、労働基準法で定められた残業時間の上限を超える労働を求めたと受け取れる発言をしていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。社内ネットで配信された動画を入手した。

 創業者の渡邉美樹氏(62)が12年ぶりに社長に復帰したワタミ。コロナ禍で外食事業が厳しい中、渡邉氏が新たな収益源として力を注いでいるのが、「ワタミの宅食」だ。11月12日発表の中間決算でも、宅食事業の売上高は約178億円で、国内外食事業の約75億円を大きく上回った。

社長に復帰した渡邉氏 ©共同通信社

 一方、ワタミを巡っては、過去に新入社員が過労自殺するなどブラックぶりが問題視されてきた。宅食事業を巡っても、昨年9月、営業所長の残業代未払いに関して労働基準監督署から是正勧告が出されている。さらに今年3月にも、月75時間を超える残業をさせていたとして、是正勧告が出されていた。

 その宅食事業のトップである宅食事業本部長に10月1日付で起用されたのが、執行役員の肱岡彰彦氏だ。

 10月の最終週、全国で数百名いる「ワタミの宅食」営業所の所長に向け、社内ネットで1本の動画が配信された。「週刊文春」が入手した動画によれば、肱岡氏は以下のように語っている(音声のみ公開)。

肱岡「11月の残業が増えるということは……増えるということは問題がありませんし、逆に言うと、増やして下さい。で、必ずいま述べたような施策を、必ずやるというふうに考えて下さい」

 労働基準法で定められた残業時間の上限は原則的に月45時間だが、次のように続けた。

肱岡「残業に関してはですね、会社の考え方として、残業は必要に応じてして下さい、というスタンスですけれども。ただし皆さんの健康を考えて45時間というのを目安にしてます。ですから45時間というのを一つの目安として、上長とご相談をしてみて下さい。ただ11月はですね、強化月間ということで、45時間を超えるということがあってもいいというふうに考えてます。どうしても労働基準法に触れるので80時間というのはできませんけれども、45時間超えるということも、会社としては構いませんので」

肱岡氏(左)と渡邉氏(渡邉氏のフェイスブックより)

 そして、動画の最後はこう締めくくったのだった。

肱岡「一番の優先順位を営業活動にすると。残業守る、ということじゃなく、営業活動するということを最重要に考えて頂いて、11月、頑張って下さい」