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日本各地にサーバーを設置

 技術的に1番優れている点は世界190カ国に同時配信できることだろう。

 アメリカから日本に映像配信するためには、太平洋の海底ケーブルを使って映像通信する。もし、日本にいる500万人もの会員が同じ時間帯にインターネットで視聴するとなると、回線がパンクして映像が途切れたり、他の通信ができなくなってしまう。

 そこで、ネットフリックスは、専用のサーバー、作品を蓄積し配信するためのデータセンターのようなものを、日本各地に設置している。アメリカからではなく、日本国内の近いところから映像を送れるようにしているのだ。

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©iStock.com

 専用サーバーには、その地域でどのような作品が多く見られるかという統計分析に基づき、ニーズの高い作品を優先的に保存する。新作を一斉配信するときには、事前に、それもネットへのアクセスが減る深夜に少しずつ映像データを移しておく。そうやって、転送コストやネット回線の負担を減らす工夫が施されている。

 映像圧縮の技術開発も進む。スマートフォンで映像を見るためには、データ容量を小さくする必要がある。同社は7年間で、5分の1の容量まで下げても標準画質の映像を見られるようにした。そこからさらに容量を下げてもハイビジョン映像を見られるまでに改良を重ねている。容量が下がっているのに高画質の映像を見られるという信じられないことをやってのけたのだ。

“NO RULES”経営

 快適な映像体験はこうした最先端のテクノロジーが支えている。ネットフリックスが映像配信会社として特異なのは、自前で技術開発をしている点にある。AIを駆使したデータ解析で好みにあった作品を推薦する「レコメンド機能」も、同社独自の技術。テックカンパニーであるからこそ、世界最高峰のエンジニアが集まるシリコンバレーに本拠地を置き大量のエンジニアと研究者を雇用してきたのだ。

 ネットフリックスの創業者で共同最高経営責任者(co‒CEO)のリード・ヘイスティングス氏は、『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』を上梓し、そこで語られたユニークな経営哲学が話題となった。

 2020年10月、日本で「日経フォーラム 世界経営者会議」にリモート登壇し、経営をテーマに講演を行っている。そのタイミングで彼をインタビューしたが、その中で最も印象に残ったのは次の言葉だ。

「ネットフリックスは“家族”というよりも“プロスポーツチーム”」

 一体、どういう意味か。発言を紐解いてみよう。