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エラーはプロセスの一部

 また、上司が部下の働き方を管理することもない。適切な人材がいれば、別に指揮命令系統は必要ないからだ。社員一人ひとりに自立した意思決定を促し、上司が部下に命令することを極力なくしている。

 その裏返しで「指示待ち」は許されない。上司はその部署が十分に機能しているかを監督はするが、部下に指示をする役職ではない。「あなたがやりたいのなら、YOUやりなさいよ」なのだ。

 プロスポーツチームというと、一つのミスも許されないのではないかと思ってしまうが、実はその反対である程度の失敗は許容される。

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 前出の取材で、ヘイスティングス氏はこうも述べている。

「安全性が第一であるという企業においては、(ノー・ルールズは)追求すべきではない。例えば、百万単位のワクチンを作るということであればすべてが完璧でなくてはならない。工場など安全第一の事業・業態では、イノベーションよりも精度のほうが優先されます。

 一方、革新的なことをする場合には、さまざまなことが起きます。エラーもミスも起きます。それを許容した上で進むアプローチが重要です。イノベーションを高めようとしているとき、エラーはプロセスの正常な一部として受け入れられるべきものなのです」

求められる役割が終わったらクビ

 プロ野球に置き換えてみると分かりやすい。選手はエラーや三振の数よりも、良いプレーをいくつしたかで評価されるもの。ネットフリックスも失敗は当然という価値観のもと社員たちがのびのびと働けるようにしている。ただし、トータルで会社に貢献できなければ、プロ野球選手と同じで契約終了となる。

 個人に最大限の自由と裁量、そして十分な報酬を与え、チームへの最大限の貢献を求める。

 こうしたカルチャーに合わないことを理由に、違う会社へと移る社員は一定数いる。また、求められる役割が終わった場合もクビを告げられ転職へと進む。同社の離職率は年8~10%で、これはシリコンバレーの他のIT企業とあまり変わらない水準だという。シリコンバレーでは転職は当たり前のことでマイナスなことではない。日本の終身雇用制とは大きく異なるのだ。

 フリージャーナリスト・西田宗千佳氏による「ネットフリックス独り勝ちの理由」の全文は「文藝春秋」2022年3月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

文藝春秋

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ネットフリックス独り勝ちの理由