スペイン・カタルーニャ州が分離独立問題に揺れている。独立をめぐる住民投票の強行に対し、中央政府は州議会を解散し、自治権を停止した。さらに前首相への逮捕状を発行。収束の見えないこの問題は何を意味し、今後どうなるのか。
EUの「ドイツ帝国」化に警鐘を鳴らし、英国のEU離脱をも予言していたフランスの家族人類学者、エマニュエル・トッド氏は、「カタルーニャの問題は、ヨーロッパの単なる一地方の問題ではない」と語る。
「カタルーニャは、小さい地域ながらも、ヨーロッパ文化の中核の一つを成しています。それだけに、カタルーニャで起きていることは、ヨーロッパにとって重大なのです」
「独立派の主張は無責任で非現実的だ」とする報道が多いなかで、トッド氏はこう述べる。
「今日、スペインの首都マドリードは、EUの中枢であるブリュッセルの指令に忠実なだけの経済政策――通貨ユーロの価値の維持と緊縮政策――を行っていて、国家としてのスペインに必要な経済政策を放棄しています。スペインは、もはやEUの1地方でしかなく、主権国家として存在していないのです。そうであれば、カタルーニャの人々が、スペインに自己同一化する必要も魅力も感じないのは当然です」
「分離独立のリーダーたちは、ブリュッセルに、いわば『亡命』しました。これについてヨーロッパ主義者は、『卑怯だ』『意味がない』などと批判しましたが、カタルーニャの指導者たちの方が一枚上手です。巧妙にも、ブリュッセルというEUの中心に混乱を持ち込んだのですから」
カタルーニャ問題は、EUの行き詰まりの象徴であり、その原因は通貨ユーロにある、とトッド氏は強調する。
「現在のヨーロッパは、痙攣を起こしている状態にあります。諸悪の根源は、通貨ユーロです。現在のヨーロッパの問題は、すべてユーロに起因していると言っても過言ではない。ヨーロッパは、今、ユーロとともに死滅しつつあるのです」
なぜ通貨ユーロが「諸悪の根源」なのか。トッド氏へのインタビューの全文は「文藝春秋」1月号に掲載されている。