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 元第一副首相という肩書でわかるように、彼はエリツィン大統領時代には政権中枢にいて、経済改革で腕を振るい、一時はエリツィンの後継者にも擬せられたほどの人物でした。しかし、経済改革に不満を持つ勢力によって解任され、プーチン政権では、リベラル派の野党に転じました。

 その後、2004年にウクライナで「オレンジ革命」と呼ばれる民主化運動が起きると、民主化指導者のヴィクトル・ユシチェンコを支持し、ユシチェンコ大統領が誕生後は投資問題担当の大統領顧問に任命されました。

 今回の事件の直前に、ネムツォフ氏は、「ウクライナの内戦にロシア軍が介入している証拠がある」と語っていたと言われますが、ウクライナとの関わりは、このときから始まっていたのです。

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 今回の事件後、プーチン大統領直属の捜査機関である捜査委員会は、ネムツォフ氏の自宅の家宅捜索から始めました。「交友関係のもつれやビジネス上のトラブルが原因である可能性があるから」というわけですが、この家宅捜索により、ネムツォフ氏と連絡を取り合っている野党勢力の全貌をプーチン政権が把握することが可能になりました。何のための捜査なのか、目的は明白ですね。

©AFLO

プーチン政権批判者は消される

 今回の事件を捜査している捜査委員会は、ロシア南部のチェチェン共和国の関係者5人を逮捕したと発表しました。

 はてさて、不思議な話です。なぜネムツォフ氏が、まったく関係のないチェチェンの関係者に殺害されなければならないのか。

 事件の第一報を聞いて多くの人が感じた「プーチン政権寄りの勢力による犯行」の可能性はどうなのか、不明です。真犯人は、別にいるのではないかとの疑惑は晴れません。

 というのも、これまでロシアでは、プーチン政権に批判的な政治家やジャーナリストが、次々に殺害されているからです。