東日本大震災を言い当てた、というマンガがある。たつき諒の『私が見た未来』だ。表紙には「大災害は2011年3月」と書かれ、作中には津波のシーンも描かれる。1999年に刊行されたにも関わらず、予言めいたその文言がテレビやSNSで大きな話題を呼んでいる。一時期は“幻の予言マンガ”としてオークションで10万円を超える高値がついた。2021年に完全版として本が復刊され、売れ行きは45万部にものぼる。

 たつき氏が文藝春秋のインタビューに応じた。

「私のマンガ『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社)が昨年10月に発売され、45万部のベストセラーになっています。過去に見た不思議な夢をベースにした作品です。

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夢日記

 全国紙で『たつき諒現象』として取り上げられるなど反響は大きいですが、あまり自分のことという感じがしません。

 そもそも私は、23年前にマンガ稼業を引退しています。現在は福祉関係の仕事をしつつ、同居家族の介助をしながら暮らしている、67歳の“普通のおばちゃん”です。

 ところが、引退した1999年に出した『私が見た未来』の表紙に『大災害は2011年3月』と書いていたことで、『東日本大震災を予言していた』と騒がれるようになりました。特に2年前、テレビ番組で取り上げられてからは、インターネット上で拡散され、親類の中高生の子たちからも『学校で話題になっているよ』と聞かされました。オークションでは10万円超で取引されていたそうです。

 その番組はたまたま私も目にして『なんで私の作品が?』とビックリしましたが、インターネットは極力見ないようにしているので、騒動からは距離を置いていました」

 だが、全国に広がった“たつき諒”現象が思いもよらない事態を招く。たつきの偽者が現れたのだ。