国際世論の猛反発を無視してウクライナ侵攻という暴挙に出たロシアのプーチン大統領。

 いったいなぜ、プーチン大統領はこれほど強気なのか?

 今回の戦乱の中、ウクライナ在住ジャーナリストの古川英治氏は、猛烈な空爆に晒される首都キーウ(キエフ)から「文藝春秋」に緊急寄稿した。その中で古川氏が指摘するのは「中国」、「新ヤルタ体制」というキーワードである。
 

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モスクワからの警告

 ロシア軍が侵攻する前夜の2月23日午後9時過ぎ、古川氏は長年の知人であるロシア政府関係者から「脱出するなら、今夜しかない」との警告を受け取ったという。

 それはこんな内容だった。

〈北、東、南からウクライナを取り囲んだ約20万人のロシア軍がおそらく明日、全面的な侵攻を開始する。3~4日で首都を包囲し、内側からも破壊工作を仕掛ける。狙いはウォロディミル・ゼレンスキー政権を転覆させ、傀儡政権を樹立することだ。

侵攻に踏み切ったプーチン

 首都では精度の高い巡航ミサイル攻撃で軍の拠点、政府機関などを無力化し、空爆による都市破壊や戦車を侵攻させる市街戦は想定していない。特殊部隊を侵入させてネット・通信網、電力の供給を遮断し、混乱を煽って包囲戦を展開する。

 包囲されてライフラインが切られれば、都市は長くはもたない。政権はすぐに降伏するはずだ。市民が抵抗しても簡単に制圧できる。大半は占領軍に従うだろう〉

 この“予言”は的中。ロシア軍は翌24日午前5時、ウクライナ各地へのミサイル攻撃を開始した。

ヒトラー、スターリンの密約との酷似

 それにしても、なぜプーチン大統領は欧米諸国をはじめ国際世論を敵に回しても平気でいられるのか? 古川氏はその背景に「中国とロシアの結託」という構図があることを指摘する。

〈欧米がロシアを非難し、対ロ制裁を打ち出したのをよそに、中国外務省スポークスマン華春瑩は2月24日、「侵略」という言葉に反論した。「ロシアはウクライナで特別な軍事行動をおこなっているが、都市をミサイルや火砲で攻撃してはいない」などと、平然と事実とは異なる見解を示した。

 プーチンは2月4日の北京五輪の開会式に合わせて訪問した北京で中国国家主席の習近平と会い、それぞれの「核心的利益」を相互に支援することで一致していた。