「エテリ門下生への志願者は殺到し、欠員待ち状態。サンボ70には政府の助成金があり、所属選手になれば授業料は完全無料となる。地方と都市部の格差が著しいロシアでは、田舎町から家族と共に身一つで上京してくる選手も少なくない。才能を武器に成功を掴むことが彼女たちの唯一の上昇手段なのです」(同前)
苛烈な競争とスパルタの弊害も甚大
圧倒的な美は徹底した“製品管理”の賜物だ。
「ジャンプに必要な筋肉は太さではなく長さと言われる。細くて長い脚が不可欠で、そのためエテリは厳しい体重・食事管理を行い、100グラム単位で指導する。メドヴェージェワは身長158㎝で体重が33㎏まで落ちていたことがあります」(連盟関係者)
苛烈な競争とスパルタの弊害もまた甚大だという。
「リプニツカヤは摂食障害を発症し、19歳で引退を余儀なくされた。メドヴェージェワは疲労骨折した上、エテリとも不仲に。カナダのコーチの元へ旅立った後、昨年引退した」(同前)
今後は出場年齢の引き上げも検討
今大会銀メダルのアレクサンドラ・トルソワ(17)は、表彰式の前にエテリの抱擁を拒否し、「全部知ってたんでしょ!」と絶叫した。
「ロシアのジュニア選手だったアナスタシア・シャボトワは13歳だった3年前、インスタライブで安定した演技の秘訣を問われ、『ドープ(薬物)をたくさん飲むことよ』『みんなやってる』と発言。後に謝罪に追い込まれている。ワリエワの調査結果次第では組織ぐるみのドーピングが明らかになる可能性は高い」(同前)
CASで仲裁人も務める早川吉尚弁護士が語る。
「今回はCASの誤った判断により、15歳の少女は出場停止以上の精神的損害を被ってしまったといえます。今後は出場年齢の引き上げも検討されている。アスリート保護の観点から、行き過ぎた勝利至上主義、商業主義を見直すきっかけにすべきでしょう」
圧倒的な強さから「絶望」という異名を持つワリエワ。再び“絶望工場”に帰らせてはならない。