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高校卒業後は化学品メーカーに就職、入社2年目にして子会社の経理一切を任された。のちに当時を振り返り、《二十歳前後の僕にそこまでやらせてくださるのは、本当にありがたかったし、やり甲斐がありましたね。(中略)自分の仕事に誇りを持って、働けました》と語っている(※4)。
この経歴からもうかがえるように、藤井は最初から芸能界を志していたわけではない。吉本入りのきっかけは、兄が吉本新喜劇の若手劇団員募集の広告を見つけ、勧めてくれたことだった。それまでお笑いに特別興味があったわけではなかったが、何となくオーディションを受けたところ合格者100人の1人に選ばれ、会社に勤めながらレッスンに参加し始めた。
吉本を飛び出し、行きついた先は…
初舞台は入団3ヵ月目の初の若手公演。当初は出演メンバーに選ばれなかったが、稽古には参加していたところ、出演するはずだった1人が稽古に来なくなり、急遽、藤井が代役に抜擢される。
入団半年後には、大阪の深夜番組にレポーターとしてレギュラー出演するようになった。この時点でもまだ会社で働いていたが、深夜に仕事を終えて翌朝には出勤という生活はさすがに続けられないと思い、退職を決める。翌週からは吉本新喜劇の劇場公演のローテーションに入った。
順調な出だしといえるが、心のなかでは、新喜劇は本当に人前に立ちたい人がやるべきだと思っていたため、ずっとコンプレックスがあったという。加えて、一日にいくつもの舞台を掛け持ちするスケジュールにも耐えかね、22歳のときにはいったん吉本を飛び出した。