松村を欠いた中部電力は、リード石郷岡、セカンドに2020年に加入した鈴木みのり、サードに中嶋星奈、スキップに北澤育恵という新たな布陣で選考会に挑んだ。ミスが出つつも、北澤の勝負強いショットでなんとか結果を出した格好だ。
大会後に慣れないサードをこなした中嶋は、「千秋さんのすごさがわかった」とコメントを残していた。その頼れる先輩は、来季以降、ミックスダブルスの強化のため、チームを離れる時期が出てくる可能性がある。そのケースも想定して、前述の石郷岡-鈴木-中嶋-北澤の若い布陣で挑む試合が多くなるかもしれない。特筆すべきは、各選手の氷上での役割だ。
「リードはあれくらいやって、やっと世界と戦える」
石郷岡はセットアップとスイープにこれまでと変わらず注力することになるが、今大会ではセンターラインに乗った石のウィック禁止という新ルールが試される。リードの選手は、さらなる精緻なショットが求められる。
また、自身も解説者として現地で北京五輪を観戦した両角コーチは、世界的なリードのレベル向上、ロコ・ソラーレの吉田夕梨花が見せた出色のパフォーマンスについて言及した。
「夕梨花選手が、難しいアイスやクセのある石が言い訳にならないことを証明してくれた。あれを目指すというよりは、『リードはあれくらいやって、やっと世界と戦える』という意識でプレーしてほしい」
世界選手権初出場となるセカンドの鈴木は、ラウンドロビン(総当たりの予選リーグ)12試合、さらにプレーオフという長丁場に適応できるかがまずは課題になってくる。日本代表のユニホーム、新布陣、チームとして初の渡航など、初モノづくしの遠征だが、もともとマルチタスクをこなせる器用な選手だけに、その刺激をエネルギーに変えて乗り切りたい。
ポジション変更で「戦術キタザワ2.0」へ
サードの中嶋は、昨季まではスキップをこなしていたが、今季から北澤がスキップとしてハウスに立つため、バイススキップとしてプレーすることに。リードとセカンドの4投では、スイープを担当しなくてはならない。持久力やプランの切り替えという判断のスピードが彼女には新たに課せられる。
そしてスキップとなった北澤だが、前回のシルケボー大会ではショット率99%を記録する試合があるほど好調を維持していた。しばしば「戦術キタザワ」と評されるように、その決定力の高さに両角コーチは今大会でも期待を寄せる一方で、あらゆる意味で世界と渡り合えるスキップに成長すべく、さらに役割を増やした。