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「血圧の低下や失禁などを伴い、生命に関わる危険性も」食べる・吸う・触れるなどの日常行為で発症しうる“食物アレルギー”のリスク

『大人の食物アレルギー』より #2

2022/03/17

 毎年春先になると、花粉によるアレルギー「花粉症」によって、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状に悩まされる人が多いのでは。そんな花粉症と並んで患者数が増え続けているのが、食品などの摂取によって起こる「食物アレルギー」だ。

 ここでは、国立病院機構相模原病院臨床研究センターの福冨友馬氏の著書『大人の食物アレルギー』(集英社新書)から一部を抜粋。「成人食物アレルギー」の具体的な症状について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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成人食物アレルギーの症状には3つのタイプがある

 成人食物アレルギーではさまざまな症状が起こりますが、その特徴から、通常の即時型症状、特殊型の食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA:food-dependent exercise-induced anaphylaxis)と、特殊型の口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)の3つにタイプに分類できます。

 子どもの食物アレルギーでは即時型の頻度が高いのですが、成人では、食物依存性運動誘発アナフィラキシーや口腔アレルギー症候群といった特殊型の症状が増えるのが特徴です。

 成人食物アレルギーは乳幼児の食物アレルギーに比べて多様なため、次のような3つの軸で整理すると理解しやすいでしょう。

(1)原因となる食物は何なのか
(2)臨床による病型(タイプ)は、即時型か、特殊型(FDEIA、OAS)か
(3)発症のメカニズム(感作ルート)は経口か、経皮か、経粘膜か

すぐに症状が出る「即時型」

 即時型食物アレルギーの症状は、原因となる食物を摂取した後、通常2時間以内にさまざまな臓器で起こりますが、最も多いのは摂取後30分以内です。

写真はイメージです ©iStock.com

 即時型食物アレルギーの中で稀に、食後4時間、例外的に食後4時間以上経って症状が出る場合があります。納豆によるアナフィラキシー、一部のアニサキスアレルギー、マダニ咬傷関連の獣肉アレルギーの3つは、消化管からアレルゲンが吸収されるのに時間がかかるために、食後4時間以上経って症状が出ると考えられます。